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ゾンビのような温暖化懐疑論(下)

世界では懐疑論を越えて、大きなムーブメントが起きている

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 世界的には、今、若者を中心に大きな抗議運動が起きている。

ドイツ連邦議会の建物を赤い布を掲げて取り囲み、地球温暖化対策を訴える人たち=2019年6月28日、ベルリン、野島淳撮影  拡大ドイツ連邦議会の建物を赤い布を掲げて取り囲み、地球温暖化対策を訴える人たち=2019年6月28日、ベルリン、野島淳撮影

 以前にも本欄で紹介したように、2019年1月には、ドイツでは3万人、ベルギーでは1万2500人の中高生が、より厳しい温暖化対策を政府に要求するために登校を拒否し、街頭でデモを行った。

 これは、Fridays for Future(未来のための金曜日)運動と呼ばれており、世界中の若者に行動を呼びかけた3月15日には、125カ国で160万人の子供や若者たちが参加した。

 また、2019年4月、ロンドンでは、議会前広場といった街の中心の一部がExtinction Rebellion(絶滅への反逆)という名前の市民グループによって封鎖され、ロンドンだけで1100人以上が逮捕された。同様のアクションは、オーストラリア、ドイツ、トルコ、インド、デンマーク、カナダでも行われた。

なぜ日本では争点にならないのか

 しかし、日本での盛り上がりは小さい。世界的にFridays for Futureが行われた3月15日、日本での参加者はわずか100人程度であり、ドイツなどと比較すると2、3桁少なかった。この前の参議院選挙でも、温暖化は言うに及ばず、原発やエネルギー問題さえも大きな争点にはならなかった。

 なぜ日本では、エネルギーや温暖化問題が大きな争点にならないのか。その理由として、懐疑論の影響の他に下記のようなものを思いつく。

 第一に、日本では温暖化の被害が見えにくいことである。温暖化による被害は様々あるものの、大量の人や動物の命につながるのは、洪水、暴風雨、干ばつ、熱波、山火事などである(現時点での被害者は国連防災機関によると世界全体で年間約6千万人)。

 日本では、これらの目に見えやすい被害は相対的に大きくなく、他国からの環境難民の到来というものを経験していない。確かに、西日本では集中豪雨による土砂災害などの被害は出ていて、多くの人命も失われている。しかし、東京で起こらない限り、日本全体の問題にはなりにくいのが日本の現実である。

 第二に、他国に対する無関心である。例えば、さる3月にアフリカ南部を襲ったハリケーンによる死亡者は、1千人を超えた。インドも慢性的な干ばつに加え、2019年5月末から続く記録的な熱波で、ニューデリーで6月で過去最高の48度を記録し、200人が死亡している。しかし、日本ではメディアの報道も、国民の関心も、ほとんど無かった。全体が内向き志向になっているのだろうか。

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筆者

明日香壽川

明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

1959年生まれ。東京大学工学系大学院(学術博士)、INSEAD(経営学修士)。電力中央研究所経済社会研究所研究員、京都大学経済研究所客員助教授などを経て現職。専門は環境エネルギー政策。著書に『脱「原発・温暖化」の経済学』(中央経済社、2018年)『クライメート・ジャスティス:温暖化と国際交渉の政治・経済・哲学』(日本評論社、2015年)、『地球温暖化:ほぼすべての質問に答えます!』(岩波書店、2009年)など。

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