ゾンビのような温暖化懐疑論(下)
世界では懐疑論を越えて、大きなムーブメントが起きている
明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授
「日本は優等生」「原発は安い」という神話
第三に、日本政府による「日本は温暖化対策の優等生」という神話の存在である。確かに、日本は公害を経験し、1997年には京都議定書を生んだ国際会議(COP3)を京都で主催した。しかし、その後の温暖化対策は、他の主要国と比べて見劣りするものであり、かつその事実をほとんどの国民は知らない。
第四に、原発神話および2011年の福島第一原発事故がある。まず、「原発や化石燃料は安い」「再生可能エネルギーは高い」「これ以上の省エネは無理」という政府が作った神話がいまだに浸透していて、「原発が止まったから、温暖化対策は無理」だと思う人が少なくない。
これは、政府が「温暖化対策のために原発が必要」と言い続けていることも影響している。「脱原発も、温暖化対策も、経済にマイナス」という先入観念が強く、少なからぬ人が「温暖化対策を推進すべきだ、と言うと、原発推進と見られてしまう」という懸念すら持っている。
メディアの役割も重要
メディアの役割についても触れたい。米国では、いわゆる独立系のメディアでエネルギーや温暖化問題に特化したものが少なくない。
その一つである〝Inside Climate News〟というジャーナリストのグループは、丹念な取材に基づいて、大手石油会社Exxon(エクソン。現在はエクソン・モービル)が、人為的な気候変動のメカニズムやリスクを社内的には知っていたものの、対外的にはウソの情報を流していたことを暴いた。
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