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プラスチックス問題へ、取り組み進むカリブ海諸国

日本も世界の動きに対する感度を上げよ

桜井国俊 沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人

 最近の沖縄の天気は明らかにおかしい。雨の降り方が熱帯型になってきている。毎月第1土曜日は辺野古のキャンプシュワブゲート前での「県民大行動」の日で、8月3日には主催者発表で800人の人々がゲート前に集まり、新基地建設反対の声を上げた。天気予報は雨で、会場の1キロ隣りでは土砂降りだった。しかし集会の1時間、会場は快晴であった。

 世界の天気も明らかにおかしくなっている。欧米を記録的な熱波が襲い、気候変動のスピードが予想以上に速いとの危機感が高まっている。そうした中で、日本は世界の脱石炭の流れに逆行し、国外からの見る目は極めて厳しい。問題なのは、外から厳しい目が向けられていることについて日本社会の感度が悪いことだ。

カナリアとしての島嶼国

 地球温暖化による海面上昇で最初に消えると予想される国として、ツバルは多くの人々に知られることとなった。島嶼国は他の国からの遠隔性やその狭小性のゆえに、自然のみならずその社会・経済にも厳しいものがある。従って2030年を目標に地球社会全体がSDGs(持続可能な社会)の実現を目指すとき、最もチャレンジングな現場の一つとなるのが島嶼国である。その意味で島嶼国は、地球社会にとって、地中深くの坑道で酸素欠乏の危機を告げるカナリアのような存在であると言える。

カリブ諸国の廃棄物行政担当者と意見交換する筆者(JICA沖縄センターにて)
 筆者の沖縄生活はもうすぐ20年になるが、常々、沖縄は日本のカナリアだと思いながら暮らしている。沖縄からは日本社会の矛盾・課題がよく見えるからだ。また地球社会全体の課題・矛盾を知るために、太平洋やカリブ海、インド洋の島嶼に暮らす人々との交流に努めている。島嶼同士でお互いに学ぶものが多いからだ。

 ということで今年の8月、筆者はカリブ海の島々・国々に暮らす人々との交流に取り組んでいる。ジャマイカ、ドミニカ、ベリーズ、ガイアナ、ハイチの5カ国から来た廃棄物行政の担当者と、どうすればよりよい生活環境を市民・住民・島民に提供できるかについて議論してきた。

プラスチック製品禁止の動きが加速

 国連環境計画はウエブ上でカリブ海でのプラスチックス廃棄物問題への取り組みについて報じているが、その冒頭で紹介しているのは国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏の言葉だ。彼はこう言っている。

「我々の世界は有害なプラスチックスで埋まり、海のマイクロプラスチッククスの数は今や銀河系の星の数より多くなっている。遠く離れた島から北極まで、マイクロプラスチックスがないところはない。このままの傾向が続けば、2050年にはわれわれの海は魚よりもプラスチックスの量の方が多くなるであろう。この事態が我々に届けるメッセージは明白だ。一回使用のプラスチックスは拒絶せよ、再利用できないものは拒否せよということだ」

バリ島のプラスチックごみ=2018年12月、インドネシア、諫山卓弥撮影
カリブ海を漂うプラスチックス廃棄物==Caroline Powerさん撮影

 国連環境計画の傘下にカリブ海環境計画という部署があるが、そのコーディネーターのロルナ・イニス氏は、「海浜ツーリズムに極度に依存する経済構造を持つカリブ海の小規模島嶼諸国にとっては、海洋ごみ問題に取り組むことは、オプションではなく至上命令なのだ」と言う。

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