留学生からの授業料収入が頼り、政府は研究費増加計画を立てたが格差拡大のおそれ
2019年09月12日
テリーザ・メイ前首相は、ブレグジット延期を繰り返すことで曖昧な決着を目指していた節もあるが、党内・国民への説明不足からその政策に支持が得られなかった。最近の世論調査では当初から逆転してEU残留派が53%前後に対して離脱派が47%前後となっているが、依然として両者は拮抗しており、総選挙を行うにしても再度の国民投票を目指すにしても先行きが不透明であることに変わりはない。最近では「一度ブレグジットをして頭を冷やすべき」というような後ろ向きの議論もある。
合意なき離脱(ハード・ブレグジット)を目指すジョンソン首相だが、G7においても貿易摩擦に関してEU寄りの発言をしており、ブレグジット後も関税協定などでEUとの関係を維持して、日本を含む各国間で締結された取り決めの英国取り分を保持したい意図も透けて見える。
実は英国の大学にとっての大変動はかなり前から始まっている。2012年に授業料への税金補助が実質上打ち切られ、主要大学は学費を3倍に値上げすることに踏み切った(年額3,000ポンドから9,000ポンドへ、2017年現在は上限年額9,250ポンド)のである。
ほとんどの大学では多くの予算を必要としない文系学部の授業料を理系学部に回すことで、補助削減に対応してきた。もう一つの頼りが留学生で、EU域外からの留学生には1.5〜2倍程度の学費を課し、留学生を増加させることで大学経営の安定化を図ってきた。
しかしながら、高額な授業料は学生ローンや両親などへの負担を増大させ、揺り戻しが前政権から始まっており、学費の2/3程度への値下げが検討されている。そのような環境下でのブレグジットは、EUからの留学生を減少させる点で大学にとって危機となるはずだが、逆に英国外からの全員を留学生として高額な学費を課すことで収入の減少を抑制できると考えている大学が多いようである。
だが、
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