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NHKスペシャルも予測できなかった長時間停電

台風被害を受けた千葉からの緊急報告

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

 この原稿を書き始めたのは9月12日未明である。東京電力が千葉県の停電復旧見込みを13日と発表したからだ。当初の発表から2日間先延ばしとなった。今の段階では情報があまり整理されていないため、掲載されたときには陳腐な記事になっているかもしれない。それならそれに越したことはないと願っている。

観測史上1位の暴風

 最大級の暴風をともなった台風15号が千葉市に上陸したのは9日の午前4時過ぎである。3時過ぎに窓がガタガタと揺れ、4時ごろには一度静かになった。おそらく台風の目に入ったためだろう。5時を過ぎるとまた窓が鳴り始めた。台風の通過はそれほど長くはなく、数時間程度であった。ただ、暴風は予想通り強烈で、千葉市で最大瞬間風速57.5mを記録した。アナウンサーは盛んに「観測史上1位を更新しました」と繰り返していた。

拡大足止めされた利用客であふれる成田空港=2019年9月9日、根岸敦生撮影
拡大運転再開を待つ人で混雑するJR西船橋駅=2019年9月9日、西畑志朗撮影

 朝9時を過ぎると台風も去って行ったが、始発から交通機関の運休がアナウンスされていたので、職場に来る人は限られていた。私は午後から大学に出勤した。大木が折れていたのをはじめ、屋上に設置されていた実験用のアンテナが曲がっていた。新しい建物の窓ガラスも何枚か割れているような状況だった。

 深夜のニュースでは、台風の風は巻き込むように右側でより強くなると解説されていた。そうすると、中心の千葉市よりも東南側でさらに大きな被害が出る可能性があり、実際にそうなった。潰れたガソリンスタンドなどが映像で流れた。

 台風の通過にともなって停電も増えていき、千葉県では40万戸と報道されていた。ただ、このときはそれほど気には留めていなかった。台風に停電は付きものであり、当日には復旧するように思っていたからである。


筆者

伊藤智義

伊藤智義(いとう・ともよし) 千葉大学大学院工学研究院教授

1962年生。東京大学教養学部基礎科学科第一卒、同大学院博士課程中退。大学院生時代に天文学専用スーパーコンピューター「GRAPE」の開発にかかわり、完成の原動力となる。現在は「究極の3次元テレビ」をめざし研究中。著書に、集英社ヤングジャンプ「栄光なき天才たち」(原作)、秋田書店少年チャンピオン「永遠の一手」(原作)、集英社新書「スーパーコンピューターを20万円で創る」など

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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