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新共通テストの2020年度実施は見送るべきだ

大学入試としての適格性に多くの疑問、見切り発車は百年の禍根を残す

大内裕和 中京大学教授(教育学・教育社会学)

拡大2018年11月に実施された共通テストの試行調査(プレテスト)=東京都目黒区、諫山卓弥撮影
 2020年度からの大学入試で、これまでの「センター試験」に替わって、「大学入学共通テスト」が始まる。このことは多くの方がご存知だろう。しかし、2020年に希望する日時、場所で試験が受けられる見通しが、2019年9月初旬の時点で立っていないと知ったら、驚く方が多いのではないだろうか。

 受験生に大きな影響が及ぶ変更がある際は、2年前には予告すると文部科学省自身が原則として定めている。ところが今や「大学入学共通テスト」まで約1年4ヶ月、英語民間試験まで約7ヶ月しかない。すでにこの原則を大きく裏切っているのが現状だ。試験を受ける現・高校2年生やその他の受験生、現場教員、保護者から不安の声が上がるのも当然だろう。ここまで深刻な事態に至った以上、新共通テストの2020年度からの実施は見送るべきだ。

 同じように考える関係者が集まり、10月13日の午後、「新共通テストの2020年度からの実施をとめよう!10・13緊急シンポジウム」が、東京大学経済学研究科棟第1教室で開催される。ぜひたくさんの方が参加されるように願っている。

英語民間試験をいつ、どこで受けられるかまだわからない

 「大学入学共通テスト」は、英語民間試験の導入、国語と数学の記述式問題の導入などを特徴とする。これらの改革について多くの専門家から疑問や批判が出てきたが、この時点になっても大多数の疑問点が解消されていない。

 英語民間試験の実施については、文部科学省が設置したポータルサイトを見ても、実施日や試験会場の詳細が明らかとなっていない試験が、今日に至っても多数存在している。実施期間である2020年4月~12月は、現在の高校2年生にとっては高校3年生の期間である。学校行事や部活動の予定もあるなか、試験準備にも困るし、高校生活への悪影響も避けられない状況だ。

拡大英語民間試験の大学入試への活用に反対する請願を出した荒井克弘・大学入試センター名誉教授(左から2人目)ら=2019年6月18日、東京都千代田区の参院議員会館 、増谷文生撮影

 また、これまでのセンター試験よりも試験会場数が限られることにより、受験において地域格差が拡大する点はこれまで多くの識者が指摘してきた。さらにプラスして英語民間試験の検定料がかかるため、経済格差も拡大する。しかし、そのための対応が十分に行われる見通しは立っていない。

 より根源的な問題として、7種類の異なる試験を受けた者の成績を公平に比較できるのかという疑問もある。異なる民間試験の成績を比べるために、「各資格・検定試験とCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)との対照表」を大学センターは作成した。だが、各テストのスコアとCEFRとの対応づけは、そのテストを実施する団体が独自に行っており、文科省や第三者機関による検証は行われていないのである。

 個々の英語民間試験の公平さや公正さにも疑問が残っている。採点の方式や試験結果の周知時期、事故が起こった場合の対応などについて、現場の不安を払拭するような説明がなされていない。9月7日には、英語資格試験の内、複数の試験が採点を海外で行う方針であると『産経新聞』で報道された。採点者の国内人材不足が明らかとなり、採点者の採用基準の不透明性に懸念が広がっている。

記述式問題の導入にも多くの疑問点

 2021年1月に実施予定の「大学入学共通テスト」についても、数多くの疑問点が存在する。 ・・・ログインして読む
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筆者

大内裕和

大内裕和(おおうち・ひろかず) 中京大学教授(教育学・教育社会学)

1967年神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程をへて、現職。専門は教育学・教育社会学。主な著書に『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)、『ブラックバイトに騙されるな!』(集英社クリエイティブ)、『ブラック化する教育2014-2018』(青土社)など。