川口浩(かわぐち・ひろし) 東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長
1985年、東京大学医学部卒。医学博士。米コネチカット大学内分泌科博士研究員、東京大学医学部整形外科教室助手・講師・准教授、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター長などを経て、2018年より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医。国際関節病学会理事、日本軟骨代謝学会理事。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
画期的な骨粗鬆症治療薬に、深刻な心血管疾患が多発している
この承認に関しては、PMDAは審査報告書のなかで「ベネフィットとリスクのバランス」という言葉を繰り返し使っている。利益があるからという理由で危険性を覆い隠そうとするかのような表現は、見切り発車への苦しい言い訳とも読める。承認の判断には、強い疑問を抱かざるを得ない。
そして残念なことに、不安は現実となってしまった。世界に先駆けての国内販売後、日本のアステラス・アムジェン・バイオファーマ社が発表している「市販直後報告」では、驚くべき内容が示されているのだ。
イベニティが3月に発売されて後、8月までの5カ月間で、市販直後報告は3回出されている。内容をまとめると、次の通りだ。
■発売後3カ月(3/4〜6/3)
重篤な血管系有害事象 11例
死亡 3例
■発売後4カ月(3/4〜7/3)
重篤な血管系有害事象 19例
死亡 7例
■発売後5カ月(3/4〜8/3)
重篤な血管系有害事象 43例
死亡 11例
驚くべき死亡例の増加ぶりだ。まず注目すべきは、7月に発表された最初の3カ月の報告書だろう。この3月4日~6月3日の段階ですでに、重篤な血管系有害事象が11例も発症し、そのうち3例が死亡している。いずれもイベニティとの関連が否定できない死亡であり、うち1例は注射の翌日に心停止しているのだ。なぜこの段階で、広範な注意の呼びかけが出来なかったのか。
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