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「暴風型」の台風への備えをもっと

日本の高温化で「風」台風が増える恐れ、そこに特化した研究が必要

山内正敏 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

拡大県道をまたいで電線に倒れ込んだ杉の木=2019年9月17日午後、千葉県芝山町岩山、福田祥史撮影
 関東を9月8日に襲った台風15号で「猛風」による災害が続出した。もちろん台風の常として大雨も降ったが、昨年7月の西日本豪雨(論座「記録的な豪雨災害は、貿易風の北上がもたらした」)や今年8月の台風13号被害に比べると雨量ははるかに少なく、風の被害がとりわけ目立った。つまり俗にいう「風」台風だった。

 「風」台風とか「雨」台風という呼び名は昔からある。しかしそれは台風が通過した後に被害状況を見てつく呼び名で、実は学術的には区別されていないし、気象庁が使える台風用語にもなっていない。というのも、風と雨のどちらの被害が大きくなるかは、台風の性質だけでなく、インフラにもよるからだ。例えば秒速25m以上の暴風圏とは、私が子供のころは、家屋や樹木の倒壊する目安として、図鑑等(講談社『天文と気象の図鑑』)で説明されていた。構造物がしっかりするに従って、その程度ではびくともしなくなって、台風=雨被害というイメージが強くなってしまっただけのことだ。

 しかし、風による被害は、建造物や樹木の倒壊など、雨被害とは性質が異なる。被害を起こす主体は風の「力」だからで、その意味では、風被害は地震被害に近い。当然、大雨対策をしたところで、暴風対策にはあまり役立たない。

拡大台風15号の直撃から1週間になる千葉県鋸南町。ブルーシートが張られた家屋の多くに明かりは戻っていない=2019年9月15日午後6時19分、川村直子撮影

 今後、もしも地球温暖化やヒートアイランドの広域化で、台風の暴風が強くなるとしたら、半世紀前の暴風(秒速25m)なら十分に耐えられるインフラがいきなり耐えられなくなろう。その被害の重大性は、今回の千葉の停電被害が如実に示している。

 現段階では風台風の正確な予報は難しいが、風台風に特化した研究を進め、予報精度を高めるとともに、「暴風型」の台風への備えをもっと進めるべきだと思う。

台風の「強さ」と「勢力」

 台風情報では、中心気圧が「強さ」の、暴風圏や強風圏の範囲が「勢力」の指標として使われる。

 台風とは「目」と呼ばれる狭い範囲の上昇気流で薄くなった空気を周りから補おうとして空気が流入する現象で、上昇気流が強いほど中心気圧が低くなる。この上昇気流は、いわば熱湯の湯気のようなものだから、この「熱湯」のエネルギーが高いほど「強い」と呼ぶのは自然なのである。

 強風圏の範囲が「勢力」の指標とされるのは、どの範囲まで空気の流れや雨雲の発達を支配しているのか、というのを示しているからだ。それは中心気圧による指標と必ずしも一致せず、「小型で強い」台風もあれば、「大型で並の強さ」の台風もある。

「雨」台風は予想しやすい

 大雨に関係しやすいのは「勢力」だ。水温の高い海上の空気には湿気がたくさん含まれており、大型の台風ほど、広範囲からそれを集め、より遠くの前線や寒気にぶつけることとなり、より多くの雨をもたらす。だから、大型の台風の進路に梅雨前線や秋雨前線があり、台風によって前線が活発化しやすい気圧配置の場合は、大雨に対する特別な警報を出すようになっている。

 前線や寒気の代わりに、高気圧が台風の北上をブロックする場合も、こんどは長期間の停滞で大雨をもたらす。逆に、ブロックする高気圧も、刺激すべき前線も進路上になければ、台風はあっという間に通過して、その分、雨被害が減る。

 要するに、台風の速度や、台風進路での気圧配置から、雨被害が大きくなるか、風だけで済むかという予測がある程度可能となっている。

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筆者

山内正敏

山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員

スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。

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