カムイサウルスが語るハドロサウルス科の進化と海辺の重要性
2019年10月04日
北海道むかわ町穂別から発掘され、東京・上野で開催中の「恐竜博2019」(朝日新聞社など主催、会期は10月14日まで)に展示されている約7200万年前(白亜紀後期)の鳥脚類恐竜「むかわ竜」が先月、新属新種のカムイサウルス・ジャポニクスとして記載報告された。日本産で学名が付いた新種の恐竜はこれで八つ目だ(サハリンで見つかったニッポノサウルスは除く)。そうした恐竜の中でも、むかわ竜は全長8メートルという大きさと、全身の8割の骨が見つかったという高い完全度から、国内外の恐竜世界に新しい変化をもたらす存在となりそうだ。
カムイサウルスの記載論文は、北海道大学総合博物館の小林快次教授に、むかわ町穂別博物館の西村智宏学芸員や櫻井和彦館長らも筆者として加わり、科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。ハドロサウルス科に属する植物食恐竜であることは従来からはっきりしていたが、論文にはこれまでの恐竜の骨格に見られなかった固有の特徴として、次の3点が記された。
① 方形骨にある方形頰骨が入るくぼみの位置が低い。
② 上角骨の上に伸びる突起が短い。
③ 第6~12胴椎骨の神経弓が前方に傾いている。
ほかに歯で2点、頭骨で9点、体骨格で2点の特徴を併せ持つことも、ハドロサウルス科におけるカムイサウルスの新規性を主張する要素になった。分かりやすい点だけを説明すると、一つには頭が全体的に高い、すなわちずんぐりむっくりとした感じがすること、二つめに上腕骨つまり前脚が短めで細い、すなわち華奢であること。こうした骨格の特徴もカムイサウルスに独自性を発揮させているわけだ。
論文では、さらに次のようなことも論じられた。
また前脚が華奢なことから、カムイサウルスは必ずしも4本の脚で歩いていたとは言えず、2本の後ろ脚だけで歩いていた可能性も考えられる。それによって推定体重も違い、四足歩行では約5.3トン、二足歩行では約4.1トンと計算できたという。
木の年輪のように見える骨の中の成長停止線をもとに、年齢も推定された。脚の脛骨を切ってその断面を観察すると、9本の線が見えた。消えてしまった線も数本あると考えられるため、最低でも9歳から13歳くらいまでで、いずれにしろおとなの個体だと判断された。
さらに可能性が出てきたのが、とさかの存在だ。
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