山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員
スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
暴風被害より大雨被害の多い日本で、送電線の地下化は対策たりえない
昨年に続く暴風型台風で千葉の送電網がズタズタとなり、停電が長期化してしまった。今回吹き荒れた暴風が50年前に想定した上限レベルを超えた強さだったという理由はあるにせよ、地球温暖化に伴って暴風域が減衰せずに上陸する可能性が高まっていることや(論座『「暴風型」の台風への備えをもっと』)、建築技術や電柱・鉄塔技術が進化してきていることを考えると、あまりにも情けない。
私の住むスウェーデン最北の都市キルナでは、毎冬、発達した北海低気圧の墓場となって暴風が吹く。25年前には秒速76メートルの暴風で氷河研究所の建物全体が流されたこともあるほどだが、暴風や積雪が原因の長期停電は近年全くない。市内には人口100人以下の集落もたくさんあるにもかかわらずだ。落雷などにより年に1~2度の1~2時間停電はあるものの、困るレベルではない。
今回、千葉でここまでひどい送電網被害があった直接的、間接的な理由は色々あろうが、根本問題は日本が発送電分離を真面目にやらなかった点にあると思う。そう考える理由を、スウェーデンで行なわれている停電対策との比較から説明する。
停電対策の第一は、送電が途切れる要因の排除である。具体的には、倒木被害の予防だ。これには過去の大雪被害の教訓がある。積雪で重くなった梢が高圧送電線にのしかかって断線してきた経験だ。1990年代までこの種の停電が時々あり、対策として、送電線脇の伐採を更に徹底させ、今やスウェーデン中部以北の高圧送電線は、たとい倒木してもそこに届かない。
もちろん、日本のように山が険しく、渓谷を渡ることの多い送電線では、鉄塔の方が便利かも知れないので、その風耐性を高める解決案もあろう。しかし、最短距離で結ぶことにこだわらなければ、メンテの易しい木製電柱でも日本の大抵の場所で高圧送電線網を張れるはずだ。送電線の周りを伐採してしまうことに関しては、山の保全や環境保全の面から批判もあろう。しかし、私が飛行機で空から見る限り、日本の山では伐採跡やゴルフ場などの虫食いも目立つ。それに比べると、送電線網の場所や、土砂崩れ対策さえ気をつければ、送電線沿いの伐採は必要悪として許容範囲だと思うのである。
停電対策の第二は、