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驚いてホッとした2019年ノーベル物理学賞

予想通りの「系外惑星発見」マイヨールとケローの受賞

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 さて2017年が天文・宇宙分野だったため、今年は他分野だろうと私は思いこんでいた。事前にマスコミ関係の方々から質問された際にも「天文・宇宙分野なら次は系外惑星でしょうが、今年はないでしょう」と堂々と答えていた。だからこそ、ノーベル財団の発表で開口一番、「今年は宇宙である」との言葉を聞いたときにはとても驚いた。さらに、ピーブルズの写真が映し出されたのを見て再び驚き、その後に映ったマイヨールとケローの写真を見て何故かほっとしたのだった。

 早速、彼らの業績に関する解説を依頼され、翌朝、日本物理学会ホームページに掲載した。したがって本欄では、やや個人的な視点を織り交ぜながら、相補的解説をしてみたい。

自ら光らない惑星の検出は難しい

 「この宇宙に果たして太陽系以外の惑星系が存在するのか」、「我々は一人ぼっちなのか」。これらがはるか昔から人々が抱き続けてきた根源的な問いであることは間違いない。しかし、太陽系で最大の惑星である木星の公転周期は12年、しかもその明るさは太陽の1億分の1以下でしかない。太陽系が惑星系の典型例であるとすれば、遠方から恒星の周りの惑星を検出するのはほとんど絶望的に難しいことなのである。

 一方、惑星を伴う恒星は惑星と同じく共通重心の周りを公転しており、その速度は特徴的な周期変化を示す。したがって、惑星の直接検出が困難であろうと、恒星の速度を精密に測定すれば、惑星の有無を間接的に検証できるかもしれない。

拡大ドップラー法による系外惑星の探し方

 マイヨールらは、1977年から13年間かけて291個の恒星の速度を継続的に観測したが、有意な変動を検出できた37個はすべて連星系であった。つまり、公転の相手は惑星ではなく恒星だった。しかし、惑星の場合は速度変動の振幅が小さいがために検出できなかっただけかもしれない。そのために、より高精度の検出器を開発し、1994年4月から有意な視線速度変化が検出できなかった142個の恒星に絞って再度定期的観測を始めた。1994年9月にはペガスス座51番星(51Peg)の速度変動に気づき、それから1年かけて、その周りをわずか4.2日の周期で公転する0.47木星質量の惑星(51Peg b)の存在を結論した。この論文(Michel Mayor & Didier Queloz"A Juipter-mass companion to a solar-type star", Nature 378, 355, 1995)は1995年8月29日に受け付け、査読を経て10月31日に受理、11月23日に出版されている。

 木星と同程度の質量をもつ巨大惑星が、恒星の周りを4.2日という驚異的な短周期で回っているなどと予想した人はいなかった。もちろん2人も、このデータが本当に惑星によるものなのか、大いに悩んだようだ。

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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に、『人生一般二相対論』(東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『この空のかなた』(亜紀書房)、『情けは宇宙のためならず』(毎日新聞社)、『不自然な宇宙』(講談社ブルーバックス)、『宇宙は数式でできている』(朝日新聞出版)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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