約300人の参加者が「2020年度の実施をとめよう!」で一致
2019年10月17日
実施が差し迫っている新しい大学入試に強い危機感を持つ有志が企画した「新共通テストの2020年度からの実施をとめよう! 10・13緊急シンポジウム」(東京大学本郷キャンパス国際学術総合研究科棟第5教室)は、連休の中日であり、台風19号の影響も心配されたにもかかわらず、約300人の方に来場していただくことができた。YouTubeでの中継では同時視聴者が累計で約2000件であった。来場者の中にはメディアの方々も多く、15社26人に及んだ。
議論は大変盛り上がり、中でも特徴的だったのは「実施をとめよう!」というスローガンに反対する意見がひとつも見られなかったことである。まったくオープンな集まりなのに、集まった人たちの目的意識は同じ方向を指していた。ぜひ、大学入試とはあまり縁のない多くの方にもこの問題への関心を持っていただきたいと思う。
私は、予備校や塾の受験生や高校生に物理を教えている。本欄「大学入試新テストを中止しても高校生は困らない」で書いたように、センター試験に代わって始まる「新共通テスト」には多くの問題点があると考えており、今回のシンポジウムの呼びかけ人の一人となった。一緒に呼びかけ人となったのは、教育学・教育社会学が専門の大内裕和・中京大学教授と東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授である。
新共通テストの問題点についてTwitterで愚痴をつぶやいていた私に、大内教授から「直接会って議論をしたい」という趣旨の連絡を8月19日にいただいたのがすべての始まりだった。この問題に関連して連絡をとったことのあった中村教授にも声をかけ、8月30日に東京大学の教育学部の教室に集まることにしたところ、高校の先生も合わせて10人が集まった。ここでシンポジウムの開催を決め、集まった10人が「10・13緊急シンポジウム実行委員会」を結成した。
呼びかけ人の3人は日時を決めたり、開催場所を確保したり、登壇者を選定したりと企画を確定していった。「実行委員会」はポスターを作り、SNSなどを利用して来場者を一人でも多く集めるよう努力した。
ここで、新共通テストについて、簡単に説明したい。変更点の柱は、
1 英語における民間の資格・検定試験の活用
2 国語と数学への記述問題の導入
3 「思考力・判断力・表現力等」を問う問題作成
である。いずれの変更にも重大な問題があり、特に1と2に関しては、計画の公表当初から多くの人が問題点を指摘してきた。
1の英語民間試験については
・採点の公平性・公正さへの懸念
・外部試験の試験ごとのレベル分けの不統一
・外部試験の導入による経済的負担の増大
・地域格差による受験機会の不公平
・英語選択者のみが民間試験受検を強制される不合理性・不公平
などの問題が指摘されてきた。最近になって各所での反対運動が活発化し、報道も少しずつ増え、国会でも審議の対象になっている。しかし、いずれの問題も解決していない。
2の記述問題の導入については
・50万人を超える受験生の採点が限られた時間内に可能なのか
が、当初から最大の問題であった。これに対して文部科学省は民間業者に採点を委託することで解決を図った。しかし、採点を民間に委託することにより、さらに、
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