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映画「天気の子」から人新世を考える

陽菜と帆高、環境活動家グレタ・トゥンベリが、16歳なのは偶然か

谷淳也 Future Earthシニア・アドバイザー、ライター

 観客動員数が1千万人を超えた新海誠監督のアニメ映画「天気の子」。作品中に「アントロポセン(人新世)」という言葉が出てくると聞いて、見に行った。

映画「天気の子」の新海誠監督=2019年7月、東京都千代田区、江口和貴撮影拡大映画「天気の子」の新海誠監督=2019年7月、東京都千代田区、江口和貴撮影
 それは、映画の終盤で主人公の少年が読む雑誌の中に一瞬、現れるだけだが、本作が地球温暖化、気候変動を強く意識した物語であることを示している。

 この映画を、気候変動と結びつけて見た人たちはどのくらいいたのだろう。鑑賞した知人に「気候変動の映画だったね」と言うと、多くは「え、そうなの?」という反応だ。一方、地球環境に取り組む活動家や研究者たちには、「え、まだ見てないけど」という人が多かった。「気候変動」は、日本ではまだ、みんなをつなげる話ではないようだ。

 アントロポセン(Anthropocene=人新世)とは、ノーベル賞化学者ポール・クルッツェンが、2000年に提唱した新たな地質学的時代区分で、「人類の時代」を意味する。

 20世紀半ば以降の急激な人口増、産業や開発の拡大、核物質製造などの人間の活動は、地球環境を変える決定的要因となった。その時代を指す。約20万年の人類史上初めてであるのはもちろん、1生物種が地球環境を支配するという意味では、46億年の地球史上でも初めてのことかもしれない。

文明のゆりかごの終わり

 1万2千年前から現在まで続く時代は、「完新世(Holocene)」と呼ばれる。私たち現生人類は、この時代に最も安定した環境に恵まれ、初めて農耕と文明を発展させることができた。だが、私たち人類は、自らの文明のゆりかごである完新世を終わらせ、人新世という特異な時代を始めてしまったのだ。

 この人新世で、人類が引き起こしている最大の危機が、地球温暖化、気候変動である。人間の生活や産業活動から排出される二酸化炭素などの温室効果ガスが、地球の温度を上昇させている。昨今の猛暑や猛烈な台風、豪雨、干ばつなどの異常気象の多くは、温暖化が原因であることが、科学的にも明らかになってきた。

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筆者

谷淳也

谷淳也(たに・じゅんや) Future Earthシニア・アドバイザー、ライター

1958年山口県生。下関西高高等学校、東京大学卒。東京銀行(現・三菱UFJ銀行)、Citigroup(米)、UBS、Credit Suisse(共にスイス)で金融ビジネスに従事。その後、障害者支援、地方活性化、教育など幅広く社会活動にかかわり、ヨハン・ロックストローム著「小さな地球の大きな世界」の翻訳を契機に地球環境問題に取り組む。