なぜ日本は環境問題への関心が低いのか、なぜ日本の若者たちは動かないのか
2019年10月25日
日本の各地で集中豪雨や台風の大雨による被害が多発し、海外でも欧州や米国の記録的熱波や南米アマゾンで大森林火災が発生するなど、世界中で地球温暖化との関連が指摘される異常気象が続いている。アフガニスタンや南アフリカ、モザンビーク、イランなどでも洪水やサイクロンにより大きな被害が出ている。
台風銀座と呼ばれてきた沖縄でも今年はとりわけ台風の来襲が多く、筆者も台風への備えで振り回される毎日だった。真夏日や熱帯夜も確実に増加しており、台風による停電でクーラーが使用できなくなると、熱中症など高齢者にとっては危機的な事態も多発することとなる。沖縄気象台のデータによると、那覇では都市化の影響も加わって1931年~2018年の88年間に真夏日が年間47日、熱帯夜が年間62夜も増加している。この傾向は今後とも続くとみられている。
ところが、温暖化防止に向けた日本の取り組みは思わしくない。温暖化防止に向けたパリ協定は2015年12月12日に採択され、翌2016年11月4日に発効したが、日本はそれまでに批准が間に合わず、2016年11月7日からマラケシュで開催されたパリ協定締約国の第1回会合にはオブザーバー参加となる大失態を演じた。
EUが示した削減目標が1990年比で少なくとも40%削減であるのと対比すると、日本のやる気のなさが歴然としている。1997年の京都議定書では1990年を基準年としていたのに、排出量が1990年比で10.6%増となった2013年を基準年としたことも顰蹙を買った。翌17年にドイツのボンで開かれた会議では、気候変動への取り組みに後ろ向きの国にNGOから贈られる「化石賞」に日本が選ばれた。
そして本年9月23日からニューヨークで開かれた国連気候行動サミットにおいて、日本政府は排出削減の強化に関するグループの議長役を依頼されたのに辞退した。2015年に示した削減目標では不十分であるとして目標の更なる引き上げを決めた国々が参加する中、目標見直しの議論がほとんど進まない日本が話し合いをリードすることは困難なことが辞退の主因であったと見られている。
今回のサミットは、100年以上ある地球の観測史上でこの5年間が最も暑かったことから危機感を覚えた国連のグテーレス事務総長が緊急に招集したもので、多くの首脳が顔をそろえた。パリ協定からの離脱を宣言した米国トランプ大統領でさえ短時間ながら出席したのに、日本の安倍首相は全く顔を見せなかった。
ところが日本では、抗議デモの参加者は約5千人と少なかった。これはどう見たらよいのだろう。筆者には、若者だけでなく日本社会の問題であるように思える。社会全体が内向きになり、現状追認になり、活力を失い、そして異質なものに不寛容になってきているのではなかろうか。
筆者は、この問題について若い世代がどのように考えているかを知る必要があると考え、沖縄大学の学生と意見交換の場を持った。彼らが表明した考えの一端を以下に紹介する。
沖縄のサンゴが急速に蝕まれていることを沖縄の人たちにショッキングな形で知らしめたのは、2008年9月10日の朝日新聞朝刊一面の記事であった。以前、「沖縄の未来を奪うサンゴ礁の消失」でも論じた問題だ。石垣島と西表島の間の海は、日本最大のサンゴの海である石西礁湖だ。ここで2003年から2008年のわずか5年間に、7割のサンゴが消失したことを伝えたのである。
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