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日本もプラスチックごみを大量に海に出している

朝日地球会議で明らかにされた現実と、とるべき対策

杉本崇 朝日新聞科学医療部記者

プラスチックごみの散乱する荒川河川敷=2018年12月、諫山卓弥撮影
 丈夫で軽くて安く、ペットボトルをはじめ身の回りの製品にたくさん使われているプラスチックが、いま地球規模の課題になっている。いったん海に流出すると、なかなか分解されず、生態系に影響するだけでなく、私たちの食べ物にも含まれているという報告が相次いでいるのだ。日本からも相当量が海に流出しており、対策は待ったなしであることが、10月14日に都内で開かれた「朝日地球会議」で示された。対策のポイントは、日ごろ使うプラスチックの見直しとごみ拾いだ。

 「朝日地球会議」は、朝日新聞社が2008年から毎年開いてきた「朝日地球環境フォーラム」を、国連が掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」への道筋を話し合う場と位置づけを変えて2016年から名称変更したイベントだ。今年は10月14日から16日まで開かれた。

 私は、これまで国内外のプラスチックごみ問題やプラスチックのリサイクル現場を取材してきたことから、プラスチックごみ問題をテーマとしたセッションの進行役を任された。登壇者に招いたのは、河川工学を専門とする二瓶泰雄・東京理科大学教授と、ごみ拾いアプリを開発したスタートアップ企業「ピリカ」の小嶌不二夫代表だ。いずれも海の専門家ではないが、プラスチック問題の解決に向けたヒントを考える上では欠かせないと考えて依頼した。

1970年代から指摘されながら、関心が高まったのはこの数年

朝日地球会議のプラスチックごみセッション。右端が小嶌不二夫さん、中央が二瓶泰雄さん、手前が筆者=2019年10月14日、東京都千代田区のイイノホール、飯塚悟撮影
 「海のごみやマイクロプラスチックは他人事でしょうか」。二瓶さんは集まった300人を超える聴衆に問いかけた。1970年代から海鳥が海に流出したプラスチックを飲み込むことは研究論文で報告されていたが、普段の暮らしからは目が届きにくい場所であり、今ほどメディアに取り上げられなかったこともあって、関心はなかなか高まらなかった。

 しかし、ここ数年で風向きが変わった。世界の会社経営者、政治家、学者が集まる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が2016年に「このままでは2050年までに海のなかのプラスチックが世界中の魚の量を超えてしまう」との試算を公表した。現時点でも世界全体で考えると、1分ごとにごみ収集車1台分のプラスチックごみを海に捨てているのとほぼ同じになる。

山形県沖で採取されたマイクロプラスチック=諫山卓弥撮影

 海に流れ出したプラスチックは、紫外線や波の力などで細かく砕かれて「マイクロプラスチック」になり、何十~何百年も分解されない。最近では、マイクロプラスチックが、魚や貝だけでなく、海水から作られる塩や、人間の便からも見つかっている。人間の健康に悪い影響があるかどうかはまだ詳しく分かっていないが、プラスチックには有害物質がくっつく性質があることがわかっている。こうして、遠い海の話ではなく、私たちの暮らしに関わる問題だと関心を持つ人が増えてきた。

 海のプラスチックごみの大半は陸から来ていると考えられている。中国やインドネシア、フィリピン、ベトナムなど近隣諸国は

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