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面白おまっせ! サイエンスのノンフィクション

大人が読んで、子どもたちに語りかけてほしい

仲野 徹 大阪大学医学部教授

理科離れを防止するには大人が本を読むべし

 ノンフィクションが好きである。なかでも伝記が好きで『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究』(河出文庫)といった本を上梓しているほどだ。その本では20冊近くの面白い伝記本を紹介しているのだが、その多くは絶版になってしまっている。本が売れなくなったと言われて久しいが、なかでもノンフィクションは特にひどいらしい。

 ちぐはぐなところもあるとはいえ、我が国は科学技術立国を目指していることになっている。そして、これからはSTEM(Science、Technology、Engineering and Mathematicsの頭文字で、科学・技術・工学・数学)教育が大事だと言われ始めている。しかし、男の子の将来なりたい職業には科学者がベストテンにはいっているにもかかわらず、残念なことに理科離れが叫ばれて久しい。

 理科教育を変えるべきというのは確かにそうだろう。しかし、それだけで十分とは思えない。周りの大人たちが科学に興味を持って、こんなに面白い話があるのだと子どもたちに語りかける必要がある。そのためには優れたサイエンスノンフィクションを読むのがいちばんだ。

 「優れた」サイエンスノンフィクションと書いたのには訳がある。そんな内容はフィクションだろう、と言いたくなるようなエセ科学本や、怪しげな医学書があったりするからだ。そんな本に限ってよく売れたりするから厄介である。もちろん、そんな本は読んではいけない。

 なかなか見分けるのは難しいのだが、ごく最近、神戸大学医学部感染症内科の岩田健太郎教授と医療ジャーナリストの岩永直子さんによる『新・養生訓 健康本のテイスティング』(丸善書店)が出版された。この本では「健康本」11冊の批判的解説がおこなわれていて、どのような「健康本」が信頼に足るかがわかってくる。

読み手の層が薄い日本

ジャレド・ダイアモンド氏=鈴木香織氏撮影
 オススメとしてはどんな本がいいか、主観的になりすぎるといけないので、
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