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身体の自由/不自由と現代技術 緊張関係の作品化

科学技術と言論とアートを融合させる実験場——あいちトリエンナーレ鑑賞記(2)

粥川準二 県立広島大学准教授(社会学)

 前回に続き、あいちトリエンナーレについて書く。10月13日、台風が去って開館した愛知芸術文化センターで、まずは夏には展示中止されていた作品たちを観た。

 たとえば、CIR(調査報道センター)の〈ボックス:独房のティーンエイジャーたち〉など一連の映像作品は、記者たちによる入念な取材の成果を、さまざまなテーマにマッチしたアニメーションと、ヒップホップなどの音楽を組み合わせて表現し、社会問題に切り込む。たとえば〈ボックス〉は、ニューヨークの収容施設で未成年者が独房に閉じ込められていたことを暴く。計6本の映像作品が展示再開された。

拡大CIR(調査報道センター)は取材成果をアニメで表現

 数カ月前、CIRがあいトリに参加すると知って、筆者は驚いた。というのは、筆者が初めて翻訳(山口剛との共訳)した『有毒ゴミの国際ビジネス』(ビル・モイヤーズ編、技術と人間、1995年)という本は、CIRによる取材の成果をまとめたものだったからだ。『朝日新聞』(7月30日付)によれば、CIRは近年、取材の成果を「文章では届きにくい層にも響く表現手法」で発表することに力を入れているという。

「我が家の裏庭ではやめて」

 『有毒ゴミの国際ビジネス』を翻訳する過程で、筆者は初めて「NIMBY(Not In My Back Yard)」という言葉を知った。「(必要なのはわかるけど)我が家の裏庭ではやめて」という意味で、廃棄物処理場の問題などを論じるさいにしばしば使われる言葉である。そしてあいトリの会場の1つ、豊田市美術館では、高嶺格の〈NIMBY (Not in My Back Yard)〉が展示されていた。

 この作品が扱っているのは沖縄の基地問題だが、「表現の不自由展・その後」を気に入らない人たち、『朝日新聞』が嫌いな人たち、“ネトウヨ”や“アンチ津田”と呼ばれる人たちが見たら怒りそうなモチーフがそのデザインに使われていた。彼らはこの作品を観た/見たのだろうか? なおあいトリには、この作品や「表現の不自由展・その後」以外にも、彼らが嫌いそうな作品がいくつもあったのだが——。

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筆者

粥川準二

粥川準二(かゆかわ・じゅんじ) 県立広島大学准教授(社会学)

1969年生まれ、愛知県出身。フリーランスのサイエンスライターや大学非常勤講師を経て、2019年4月より現職。著書『バイオ化する社会』『ゲノム編集と細胞政治の誕生』(ともに青土社)など。共訳書『逆襲するテクノロジー』(エドワード・テナー著、山口剛ほか訳、早川書房)など。監修書『曝された生 チェルノブイリ後の生物学的市民』(アドリアナ・ペトリーナ著、森本麻衣子ほか訳、人文書院)。

 

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