国語より深刻な数学、どちらも共通テストでの実施は撤回を
2019年11月13日
2020年度から実施される大学入試新共通テストの目玉とされたのは「英語民間試験の活用」と「国語と数学への記述問題導入」だった。前者の延期を発表した11月1日の記者会見で、後者について萩生田文部科学大臣は予定通り実施することを明言した。しかし、その後「記述問題導入」への批判を取り上げた報道が少しずつ広がっている。その批判は、特に国語に集中しているが、数学でも同様の問題点を抱え、むしろ深刻な点もある。数学固有の問題も含めて共通テストへの記述問題導入の問題点を論じ、解決には導入を撤回するしかないことを訴えたい。
新共通テストは現行センター試験の後継の共通テストとして計画されている。共通テストは1月に実施され、それを受けた受験生は自己採点の結果に基づいて2次試験を受ける大学を決定する。
受験生は例年50万人を超える。試験の実施から国公立の2次試験までは約1ヶ月あるが、各大学への出願期間は試験実施の約10日後からの10日間に設定されている。
大学入試センターは、共通テストの成績を受験生の出願先の大学に直接送付する。当然、記述問題の成績も同様の扱いとなるので、記述問題の採点も2週間程度で完了する必要がある。
以上の理解を前提に共通テストへの記述問題導入の問題点を論じていく。
記述問題は、受験生の手書きの答案を人が肉眼で読み、採点基準に従って採点することになる。そこで、まず物理的に採点が可能なのかが問題となる。採点者は1万人とも2万人とも言われているが、50万超の答案を短期間に正確に採点することは極めて困難である。
正解例や採点基準は事前に策定されるが、必ず出題者の想定しない解答も現れる。その場合には、新たに正解例を追加したり、採点基準を調整したりする必要があり、その決定を全採点者に周知しなければいけない。また、その時点で既に採点を終えた答案の再点検も必要になる。そのような作業を50万超の答案と1万単位の採点者に対して行うことはほとんど不可能だろう。
また、公平・公正な採点を行う前提として、すべての答案と採点者を同じスペースに収容する必要があるが、そのような場所を確保できるのだろうか。データを通信で送り、採点者は自宅PCを使うとの可能性も指摘されているが、
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