獲物を襲う時の泳ぎは、なんと秒速6.7メートル!
2019年11月19日
そんなホホジロザメは、呼吸のために一定の水流が必要で、マグロのように常に泳ぎ続けなければならない。そして体温は、水温+10度ほどに保たれている。魚類の中でもエネルギー消費が大きな存在だが、そのエネルギーによって速く泳ぐことが可能なので、海の中を高速で泳ぎ回りながら獲物となる海生哺乳類や大型魚を探し続けている、という姿が思い描かれてきた。
でも実際に、ホホジロザメはどのように獲物を捕らえているのだろうか。これまではっきりしなかった捕食行動の解明に迫る研究の成果として、国立極地研究所の渡辺佑基准教授を含む国際チームが今年、論文(こちらとこちら)を相次いで発表した。
渡辺さんたちは、オーストラリア南部のネプチューン諸島に集まるホホジロザメを対象に調査した。ここは海中に下ろした檻(ケージ)の中に人が入り、やって来るサメなどを観察するケージダイビングの人気スポットでもある。ホホジロザメが多いのは、この海域で繁殖するニュージーランドオットセイが格好の獲物となるからだ。
用いられた調査の手法はバイオロギングと呼ばれる。水温や水深、そして遊泳速度や加速度を記録する装置(ロガー)をサメの体に取り付けることで、その行動の一部始終が、サメによって刻々と記録されていく。
取り付けに当たっては、サメの体への負担を抑え、研究者の身の危険を避けるためにも捕獲はしない。マグロの血肉などを海に流しておびき寄せたサメへボートで近づき、1メートルほどの長さのポールの先に付けたバネ仕掛けのロガーを、水面近くを泳ぐサメの背びれにはさむという方法をとる。取り付けたロガーは指定の時間が過ぎると自動的にサメから離れて海面に浮上するので、発信される電波を頼りに回収する。今回の調査ではロガーを8匹に、またビデオカメラをうち3匹に取り付けて、すべてうまく回収できたそうだ。
こうした調査によって、8匹のサメ自身が取った計186.8時間の行動記録が得られ、そのデータの解析からホホジロザメが島の周りでどんな行動をしているかをつかむことができた。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください