メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ホホジロザメの狩りは待ち伏せから激しく追跡

獲物を襲う時の泳ぎは、なんと秒速6.7メートル!

米山正寛 朝日新聞記者(科学医療部)

拡大背びれにバイオロギング装置を付けたホホジロザメ=Andrew Foxさん撮影
 凶暴な肉食魚というイメージが強いホホジロザメ。映画「JAWS」の印象は、上映から40年以上が経った今も多くの人の心に鮮明だ。体長3~6メートル、体重300~800キロと大きく、口には鋭い歯が並ぶ。実際に海で人が襲われる被害は、国内外で今なお発生している。

 そんなホホジロザメは、呼吸のために一定の水流が必要で、マグロのように常に泳ぎ続けなければならない。そして体温は、水温+10度ほどに保たれている。魚類の中でもエネルギー消費が大きな存在だが、そのエネルギーによって速く泳ぐことが可能なので、海の中を高速で泳ぎ回りながら獲物となる海生哺乳類や大型魚を探し続けている、という姿が思い描かれてきた。

人気スポットでの調査

 でも実際に、ホホジロザメはどのように獲物を捕らえているのだろうか。これまではっきりしなかった捕食行動の解明に迫る研究の成果として、国立極地研究所の渡辺佑基准教授を含む国際チームが今年、論文(こちらこちら)を相次いで発表した。

拡大ホホジロザメを見るケージダイビングの様子=shutterstock.com/Stefan Pircher
拡大ケージの中からホホジロザメを眺めるダイバーたち=shutterstock.com/VisionDive

 渡辺さんたちは、オーストラリア南部のネプチューン諸島に集まるホホジロザメを対象に調査した。ここは海中に下ろした檻(ケージ)の中に人が入り、やって来るサメなどを観察するケージダイビングの人気スポットでもある。ホホジロザメが多いのは、この海域で繁殖するニュージーランドオットセイが格好の獲物となるからだ。

 用いられた調査の手法はバイオロギングと呼ばれる。水温や水深、そして遊泳速度や加速度を記録する装置(ロガー)をサメの体に取り付けることで、その行動の一部始終が、サメによって刻々と記録されていく。

拡大船上でロガー付きのポールを構える研究者
拡大ホホジロザメの背びれにロガーを取り付ける研究者=いずれもAndrew Foxさん撮影

 取り付けに当たっては、サメの体への負担を抑え、研究者の身の危険を避けるためにも捕獲はしない。マグロの血肉などを海に流しておびき寄せたサメへボートで近づき、1メートルほどの長さのポールの先に付けたバネ仕掛けのロガーを、水面近くを泳ぐサメの背びれにはさむという方法をとる。取り付けたロガーは指定の時間が過ぎると自動的にサメから離れて海面に浮上するので、発信される電波を頼りに回収する。今回の調査ではロガーを8匹に、またビデオカメラをうち3匹に取り付けて、すべてうまく回収できたそうだ。

泳ぐ速度や潜る深さがわかった

 こうした調査によって、8匹のサメ自身が取った計186.8時間の行動記録が得られ、そのデータの解析からホホジロザメが島の周りでどんな行動をしているかをつかむことができた。 ・・・ログインして読む
(残り:約1764文字/本文:約2788文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

米山正寛

米山正寛(よねやま・まさひろ) 朝日新聞記者(科学医療部)

朝日新聞科学医療部記者。「科学朝日」や「サイアス」の編集部員、公益財団法人森林文化協会事務局長補佐兼「グリーン・パワー」編集長などを務め、2018年4月から再び朝日新聞の科学記者に。ナチュラリストを夢見ながら、とくに自然史科学と農林水産技術に関心を寄せて取材活動を続けている。

米山正寛の記事

もっと見る