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しょせん大学ランキングは一面的、どうぞ冷静に

公平な研究評価とはなにか 公平な研究評価は存在するのか

伊藤隆太郎 朝日新聞記者(西部報道センター)

 以前、「大学ランキングの誤解」について書いた。大学の研究者や経営陣にとってランキングは大変な関心事だが、よく耳にする「国際化を進めよ」「論文数を増やせ」といった方法論や、「そもそもアジアは不利だ」といった批判が、みんな間違いであることを整理した。

拡大研究業績は適切に評価されているのか——。人文・社会系の研究者には不公平感が強い
 この誤解のポイントは、「被引用数」のとらえ方だった。大学の順位づけでは、研究者の論文への評価が占める比重が大きい。ところがこの論文の評価尺度である「被引用数」の重要性が、勘違いされているわけだ。

 そこで今回は続編として、逆に「被引用数を重視しすぎる弊害」を取り上げたい。いやまあ有り体に言って、大学ランキングが被引用数を重視している(重視しすぎている)のが現実である以上、ランキング向上を使命とするなら、この残念な現実も素直に引き受け、対応するしかないかも知れない。だが、どんな弊害や矛盾があるかを確認しておくことは、ランキングを相対化し、順位に踊らされない姿勢につながるのでは……なんて考える次第だ。

そもそも大学ランキングとは?

 まずは大学ランキングについて振り返っておく。大学ランキングとは、あくまで民間業者などが勝手に発表している順位づけだ。発表組織はいくつもあるが、とくに注目度が高い「THE」「QS」「ARWU」が御三家とされている。それぞれ独自の指標や計算方法で順位づけしている。

 ところが、この順位がそのまま大学の運営資金や研究費に影響するからやっかいだ。政府は2013年の「日本再興戦略」のなかで、大学の潜在力を引き出すためとして「世界ランキングのトップ100 に10 校以上を入れる」と目標に掲げた。文部科学省の「国立大学改革プラン」も同様に、ランキングを目標化している。いまや大学ランキングは無視できないどころか、国家的な課題だ……と、ここまでが前回の繰り返しだ。

 その後、御三家のなかで最も有名な「ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション=THE」の最新版が発表された。トップ10の顔ぶれは前年と同じで、英米が独占。日本もほぼ前回並みにとどまった一方で、アジア諸国は躍進。中国やシンガポール、台湾などがランクイン数や順位を上げて、相変わらず日本は危機感を強めている。


筆者

伊藤隆太郎

伊藤隆太郎(いとう・りゅうたろう) 朝日新聞記者(西部報道センター)

1964年、北九州市生まれ。1989年、朝日新聞社に入社。筑豊支局、AERA編集部、科学医療部などを経て、2021年から西部報道センター。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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