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今回の大学入試改革の根本的な問題点

全国一斉の共通試験はもう役割を終えたのではないか

林 隆之 麻布中学・高校教諭

新共通テストの2020年度からの実施を止めることを目標に開かれたシンポジウム第2弾=2019年11月24日、文京区の東京大学
 2021年に実施が予定されている「大学入学共通テスト(共通テスト)」では、マークシートによる選択肢問題に加えて記述問題が導入される。現在、この記述問題をめぐる多くの問題点が追及されているが、本稿では、全国で一斉に実施される共通試験が導入された経緯を踏まえたうえで、大きな観点から今回の入試改革の問題点を指摘し、「センター試験」の継続を訴えたい。また、ゆくゆくは一斉共通試験の廃止も選択肢に入りうることもあわせて考えたい。

全国一斉に行う共通試験はなぜ導入されたか

 各大学が個々に入試問題をつくっていた1970年代以前は、高校教育の範囲を超えた難問や奇問の出題が少なくなかった。建前のうえでは高校卒業と大学入学は別物であり、高校では大学受験に向けた対策が義務づけられているわけではない。しかし、とくに進学競争の圧力を受ける私立高校においては、大学入試に向けた授業も行わざるをえないのが実情である。 難問や奇問の出題は結果的に高校教育へ好ましからざる影響を与えていた。

 こうした背景を踏まえ、1979年に「大学共通第一次学力試験(共通一次)」が導入され、国公立大学はこれを一次試験として利用するようになった。

「共通一次」から「センター試験」へ

 共通一次の試験問題では、受験生の学力を測る標準的な問題が多くを占めるようになった。実際、行政は共通一次の果たした役割を肯定的に評価しており、1992年に文部省(当時)が発行した『学制百二十年史』では「難問・奇問を排した良質な出題により、高等学校教育の基礎的な到達度を判定することが可能に」という記述が見られる。

〓写真案2〓共通一次からセンター試験への改革を伝える新聞記事=1985年2月22日付

 もっとも、共通一次にも弊害があったことは忘れてはならない。『学制百二十年史』では「大学の序列化やいわゆる輪切りによる進路指導の問題が顕在化した」と指摘されている。原則として、全ての国公立大学に英数国理社の五教科の利用を課したことから、大学がその合計点数により序列化してしまったのだ。

 これを解消するために共通一次の後継として登場したのが「センター試験」である。センター試験では、各大学が選抜にあたって利用する科目の自由度を高め、私立大学による利用も促した。その結果、面接や小論文など大学が独自に課す多様な試験とあわせての合否判定が広く行われるようになった。また、私大を中心として推薦入試や帰国子女入試なども盛んになり、入試制度は多様になった。

適正な入試問題のモデルを示せている「センター試験」

 なお、マークシート式の試験について、「断片的な知識の単純暗記だけで解けてしまう」と批判されることがある。確かに、導入された当初の共通一次には、そのような問題も多かった。だが、導入から40年たった今ではセンター試験の問題は

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