全国一斉の共通試験はもう役割を終えたのではないか
2019年11月27日
各大学が個々に入試問題をつくっていた1970年代以前は、高校教育の範囲を超えた難問や奇問の出題が少なくなかった。建前のうえでは高校卒業と大学入学は別物であり、高校では大学受験に向けた対策が義務づけられているわけではない。しかし、とくに進学競争の圧力を受ける私立高校においては、大学入試に向けた授業も行わざるをえないのが実情である。 難問や奇問の出題は結果的に高校教育へ好ましからざる影響を与えていた。
こうした背景を踏まえ、1979年に「大学共通第一次学力試験(共通一次)」が導入され、国公立大学はこれを一次試験として利用するようになった。
共通一次の試験問題では、受験生の学力を測る標準的な問題が多くを占めるようになった。実際、行政は共通一次の果たした役割を肯定的に評価しており、1992年に文部省(当時)が発行した『学制百二十年史』では「難問・奇問を排した良質な出題により、高等学校教育の基礎的な到達度を判定することが可能に」という記述が見られる。
もっとも、共通一次にも弊害があったことは忘れてはならない。『学制百二十年史』では「大学の序列化やいわゆる輪切りによる進路指導の問題が顕在化した」と指摘されている。原則として、全ての国公立大学に英数国理社の五教科の利用を課したことから、大学がその合計点数により序列化してしまったのだ。
これを解消するために共通一次の後継として登場したのが「センター試験」である。センター試験では、各大学が選抜にあたって利用する科目の自由度を高め、私立大学による利用も促した。その結果、面接や小論文など大学が独自に課す多様な試験とあわせての合否判定が広く行われるようになった。また、私大を中心として推薦入試や帰国子女入試なども盛んになり、入試制度は多様になった。
なお、マークシート式の試験について、「断片的な知識の単純暗記だけで解けてしまう」と批判されることがある。確かに、導入された当初の共通一次には、そのような問題も多かった。だが、導入から40年たった今ではセンター試験の問題は
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