現在進行形で起きている激変によって懸念される深刻な影響
2019年11月29日
私たちがその異変をはじめて知ったのは、去年の6月のことであった。その日、私の勤務校を訪れた県内のある私立大学の方から、驚きの言葉が飛び出した。
「実は、この3月の入試で倍率が3桁になってしまって・・・・」
それはまさに桁違いの衝撃であり、にわかには信じられなかった。その後、来校された他の大学の方々からも同様の報告がいくつもあった。さすがに3桁の倍率は他にはなかったが、その年の一般受験では、遅い時期の入試ほど例年にない高倍率になっていたことがわかった。
原因として大学の方があげたのが「私立大学の入学定員管理の厳格化」の影響である。さらに情報を集めていくと、その影響は単に入試倍率の異常な高騰だけにとどまらず、大学と入学生のミスマッチによる多数の中退者を発生しかねない深刻な問題につながっていることがわかってきた。
いま話題になっている英語民間試験導入や記述式問題に関する混乱は主に現2年生に関わるが、実は現3年生や既卒者たちの受験にも現在進行形で別の混乱が起きているのである。文部科学省の政策が引き起こしているその混乱の実態をお伝えするとともに、混乱を乗り越えて入学した学生たちに深刻な影響が及ばないよう、大学ならびに文科省にはその対策をぜひお願いしたい。
「私立大学の入学定員管理の厳格化」(以下、定員厳格化)とは、大都市圏の大規模私立大学に学生が集中している状況を改善するため、文科省が2016年度から始めた政策である。
私立大学の予算には国から交付される助成金が含まれており、その額は大学にもよるが、平均して大学の年間収入額の1割前後にもなる。定員厳格化は、所定の枠を超えて入学させる大学に対してその助成金を交付しないという、いわば「金で大学を縛る」政策なのである。
大規模私立大学(定員8千人以上の大学)においては、2015年度以前は入学者が定員の1.2倍未満であれば助成金が交付された。それが、16年度は1.17倍、17年度は1.14倍、そして18年度は1.10倍と、段階的に厳格化が進行してきた。
19年度(現3年生の入試)では、当初1.0倍となる予定であったが、それまでの3年間の措置により一定の効果が見られたことから、1.10倍に据え置かれることになった。これで定員厳格化の影響がなくなった、のではない。厳格化だけを見れば前年度と同じ状況が継続している。さらに、翌年度は新入試制度になることから、浪人を避けて現役合格にこだわる受験生の超安全志向により、入試の混乱は前年度より悪化しているのである。
現在の大学入試には1~3月に実施される一般入試の他に、主に夏~秋に実施されるAO・推薦入試がある。
まず、定員厳格化の影響は、直接的には一般入試の合格者の急減(入試倍率の高騰)となってあらわれた。たとえばMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政の5大学)全体の合格者数は、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください