メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ナノテクが越える医療・食糧問題の壁

「がん光免疫療法」「人工培養肉」に貢献する日本発の技術

北原秀治 東京女子医科大学講師(解剖学講座)

 ナノテクノロジーは、未来の日本のサイエンスを牽引する一大分野だ。JSPSや文部科学省が力を注ぐ「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」にも組み込まれている。

 米国ハーバード大学で昨年11月、“The Japan-US Science Forum”が開かれた。テーマは“It’s a Nano World”。日本学術振興会(JSPS)と海外日本人研究者ネットワーク、在ボストン日本国総領事館の協力による4回目の開催で、筆者が2016年にボストン在住の日本人研究者と立ち上げたフォーラムでもある。

ナノテクノロジーが生んだ「がん光免疫療法」

 フォーラムは、リチウムイオン電池へのノーベル賞授賞でも評価された日本の科学技術力をさらに飛躍させるため、官・民・アカデミアが力を合わせ、世界へのアピールを目指している。今回の基調講演には、未来のノーベル賞候補と期待される米国立保健研究所(NIH)の主任研究員、小林久隆医師が登壇した。

拡大光免疫療法のイメージ
 小林医師が開発した「がん光免疫療法」には、二つの革新性がある。一つは、近赤外光を当てることで、がん細胞を破壊する新しい治療法であることだ。近赤外光線を照射すると反応する物質を、特定のがん細胞に結びつく性質がある抗体に結合させ、体内に注射して近赤外光を照射する。がんに集まった薬と光が反応し、周囲組織内の水分を吸収して膨らみ、細胞自身が壊れる。がん細胞自身をターゲットにした治療法であり、正常細胞にはダメージはなく副作用も非常に少ないとされる。

 二つ目は、体が保有する免疫細胞を活性化することだ。これはノーベル賞を受賞した「がん免疫療法」の免疫チェックポイント阻害剤(PD-1/PD-L1)にも関連する。人の免疫細胞のなかには、がん治療を邪魔する免疫細胞があるが、この邪魔をする細胞に特定の抗体を結合させ、近赤外線を当てて破壊する。すると、がん細胞の近くにいる本来の役割の免疫細胞が、がん細胞に気づき、数十分のうちに活性化してがん細胞を壊す。さらに血流に乗って全身をめぐり、転移しているがん細胞も攻撃するという仕組みだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

北原秀治

北原秀治(きたはら・しゅうじ) 東京女子医科大学講師(解剖学講座)

東京女子医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。ハーバード大学博士研究員を経て現職。専門は人体解剖学、腫瘍病理学、医療経済学。日本政策学校、ハーバード松下村塾で政治を学びながら、「政治と科学こそ融合すべき」を信念に活動中。早稲田大学大学院経済学研究科在学中。海外日本人研究者ネットワーク(UJA)理事。

北原秀治の記事

もっと見る