「がん光免疫療法」「人工培養肉」に貢献する日本発の技術
2020年01月10日
ナノテクノロジーは、未来の日本のサイエンスを牽引する一大分野だ。JSPSや文部科学省が力を注ぐ「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」にも組み込まれている。
米国ハーバード大学で昨年11月、“The Japan-US Science Forum”が開かれた。テーマは“It’s a Nano World”。日本学術振興会(JSPS)と海外日本人研究者ネットワーク、在ボストン日本国総領事館の協力による4回目の開催で、筆者が2016年にボストン在住の日本人研究者と立ち上げたフォーラムでもある。
フォーラムは、リチウムイオン電池へのノーベル賞授賞でも評価された日本の科学技術力をさらに飛躍させるため、官・民・アカデミアが力を合わせ、世界へのアピールを目指している。今回の基調講演には、未来のノーベル賞候補と期待される米国立保健研究所(NIH)の主任研究員、小林久隆医師が登壇した。
二つ目は、体が保有する免疫細胞を活性化することだ。これはノーベル賞を受賞した「がん免疫療法」の免疫チェックポイント阻害剤(PD-1/PD-L1)にも関連する。人の免疫細胞のなかには、がん治療を邪魔する免疫細胞があるが、この邪魔をする細胞に特定の抗体を結合させ、近赤外線を当てて破壊する。すると、がん細胞の近くにいる本来の役割の免疫細胞が、がん細胞に気づき、数十分のうちに活性化してがん細胞を壊す。さらに血流に乗って全身をめぐり、転移しているがん細胞も攻撃するという仕組みだ。
このように小さな物質をがん細胞にくっつける際に活躍するナノテクノロジー。がん光免疫療法は先日、楽天が巨額出資したことでも話題になった。今後の新しい治療法の一つになることは間違いないが、日本では未認可治療というイメージがあり、話題にすることもタブーな感じがする。しかし、米国ではこのような新しい治療法についても積極的に議論できる。日本のアカデミアはただちに小林医師を帰国させ、この研究を日本で発展させるべきである。
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