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大学入試サイコロ活用論に援軍あらわる

研究費の一部をくじ引きで配分する機関が世界中で増加している

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

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 私は30年来、大学入試の受験生全員にサイコロを振らせて出た目を筆記試験の得点に加えた上で、上位から選抜すべきだとの「サイコロ入試」を提案してきた(本欄2011年1月20日「入試の公平性ってなんだろう」、及び、拙著『三日月とクロワッサン』=毎日新聞出版、2012年=収録の「サイコロを振れ 受験生」参照)。こうすれば、上位の受験生の合否に影響はなく、ボーダー付近の成績の場合には、サイコロの目が合否を左右する。そういう「偶然」の要素を入れるべきだと私は主張してきたのだが、残念ながらほとんど無視されている。ところが最近、「研究費の配分」という別のフィールドではあるが、思わぬ援軍があらわれた。意を強くして、入試の公平性とは何かを改めて議論したい。

「サイコロ入試」の二つの意義

 おそらく、多くの方は「サイコロ入試」を「とんでもない提案」と思われるだろう。日本では1点差を厳密に考慮して合否を決める方式こそがもっとも公平な判定法であると信じられ、少なくとも1世紀程度はそれが採用され続けているのだから。

拡大京都大学の入試ミスについて、会見冒頭で頭を下げる副学長ら=2018年2月1日、京都市左京区、遠藤真梨撮影
 入試問題に何らかのミスが発覚するたびに大騒ぎになり、場合によっては、1年前に不合格となった受験生の入学を認め、それに対応する余分な金銭的負担を肩代わりするなどの大学側の対応が当然だとされているのはその表れだ。

 あまりにレベルが低いミスや、恣意的な判断、不正があった場合には、厳格な措置が必要なのは言うまでもないが、そもそも入学試験で厳密に1点刻みの採点をすることなど不可能なのである。その事実が共通認識になっていないことが、私には不思議だ。もしそれを可能にしようとすれば、記述式はおろか、自明の正解しかありえない退屈な問題以外は出題できなくなる。これでは、能力のある学生を選抜するという入学試験の本来の目的から逸脱するだけである。

 つまり、現実の採点には限界があり、入学試験の成績の1点の差が受験生の能力の違いを反映しているわけではないのに、点数だけで合否を決めることこそ公平だと信じられている現状は間違っている。「サイコロ入試」によって確率的操作を持ち込む意義は、入学試験の1点差には意味がないことを明示することと、採点にある程度の自由度をもたせることにある。

研究費配分機関が、くじ制度を導入

 この真面目な持論が無視され続けてきた私にとって、Nature誌 2019年11月28日号のニュース欄の記事“Science funders gamble on grant lotteries”(科学研究資金提供者は研究費くじに賭ける)は、まさに我が意を得たニュースだった。

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筆者

須藤靖

須藤靖(すとう・やすし) 東京大学教授(宇宙物理学)

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授。1958年高知県安芸市生まれ。第22期・第23期日本学術会議会員。主な研究分野は観測的宇宙論と太陽系外惑星。著書に『ものの大きさ』、『解析力学・量子論』、『人生一般二相対論』(いずれも東京大学出版会)、『一般相対論入門』(日本評論社)、『三日月とクロワッサン』、『主役はダーク』『宇宙人の見る地球』(いずれも毎日新聞社)などがある。

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