研究費の一部をくじ引きで配分する機関が世界中で増加している
2019年12月18日
おそらく、多くの方は「サイコロ入試」を「とんでもない提案」と思われるだろう。日本では1点差を厳密に考慮して合否を決める方式こそがもっとも公平な判定法であると信じられ、少なくとも1世紀程度はそれが採用され続けているのだから。
あまりにレベルが低いミスや、恣意的な判断、不正があった場合には、厳格な措置が必要なのは言うまでもないが、そもそも入学試験で厳密に1点刻みの採点をすることなど不可能なのである。その事実が共通認識になっていないことが、私には不思議だ。もしそれを可能にしようとすれば、記述式はおろか、自明の正解しかありえない退屈な問題以外は出題できなくなる。これでは、能力のある学生を選抜するという入学試験の本来の目的から逸脱するだけである。
つまり、現実の採点には限界があり、入学試験の成績の1点の差が受験生の能力の違いを反映しているわけではないのに、点数だけで合否を決めることこそ公平だと信じられている現状は間違っている。「サイコロ入試」によって確率的操作を持ち込む意義は、入学試験の1点差には意味がないことを明示することと、採点にある程度の自由度をもたせることにある。
この真面目な持論が無視され続けてきた私にとって、Nature誌 2019年11月28日号のニュース欄の記事“Science funders gamble on grant lotteries”(科学研究資金提供者は研究費くじに賭ける)は、まさに我が意を得たニュースだった。
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