決定権は学長にあっても、教授会は学長を動かすことができる
2019年12月17日
検証していく過程で改めて明確になったのは、国立大学の法人化は、財界と政府が一体となって大学における「学問の自由」を軽視し、「大学の自治」を脅かす余地を含んだまま実行されたということだ。結果として、学部教授会が無力化された。実際、最近会った現役の教員は「教授会は報告事項ばかりで、何事も自分たちで決められない。何かやろうとしても、そのための経費はなく、やる気も失せてしまう」と嘆いていた。
だが、そうやって教員たちが諦めてしまっては、大学に未来はないというのが本稿で述べたいことである。法人化後の教授会でもできることはたくさんある。その実例も紹介しながら、教授会の活性化を提言したい。
法人化前の教授会は、大学・学部の教育研究に関わる重要事項を審議し、大学自治を支える中核の組織としての役割を担ってきた。しかし、「硬直化した教授会自治が改革を阻んでいる」と経済界から声が上がり、2004年に国立大学が法人化した後、とうとう2014年に教授会の役割を限定させる学校教育法第93条の改正がなされた。
この改正により、全てにおいて決定権があるのは学長となり、教授会として意見を述べることができるのは、「学生の入学、卒業及び課程の修了」及び「学位の授与」のみで、それ以外では「学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」に限るとされた。
この法改正が、法人化されてから始まっていた運営費交付金の削減に追い打ちをかけた。基盤経費が大幅に削減され、自主的に使える経費がほとんどなくなったうえに、意見も出しにくい雰囲気をつくったのである。おそらく多くの教授会が「もう何もできない」と過度な自己規制に陥ったのではなかろうか。
しかし、そうではない教授会もあった。
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