メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

水族館のイルカショーを国際社会はどう見ているか

種の保存、調査研究、地域漁業、娯楽…衝突する問題に日本は真正面から向き合え

諸坂佐利 神奈川大学法学部准教授

 先述の通り、WAZAやJAZAが水族館は「人間のための施設であり、生き物のための施設でもある」とする以上、「イルカ問題」の核心とは、水族館でイルカショーを行う是非論や、水族館でイルカやクジラ(以下、鯨類とする)を飼育、展示すること自体の意義そのものではないか、というのが筆者の主張である。こうした主張から改めて日本の水族館を眺めると、2015年騒動の影に隠されてしまった数々の課題が浮かぶ。これらは、日本の水族館の問題でもあり、それを曖昧にしているWAZAやJAZAの問題でもあり、そして今も続く問題なのである。

ショーの是非も鯨食文化も議論を避け

 WAZAは、従来から公式ステイトメントとして、水族館とは「種の保存」、すなわち「繁殖の拠点」であると宣言しておきながら、JAZA加盟園館で繁殖施設すら持たない水族館、つまり、種の保存に貢献する可能性の極めて低い施設への批判を展開しなかった。日本には、水族館と名乗るには疑問を覚えるような施設があるという現状には目をつぶったと言えるだろう。

拡大警察官が警戒するなか、イルカ漁に反対する団体のメンバーが港に集まった=2014年9月、和歌山県太地町

 一方、繁殖が可能な施設にも課題はあった。WAZAは、日本が鯨類を食べる文化を有している点に関して是非論に及ばなかった。少し説明が必要になるが、ここには、日本の水族館で鯨類を繁殖する努力は何のためなのか、という問題が含まれている。つまり、水族館で増やされた個体を野生復帰させた場合、その個体は食用捕獲のリスクにさらされる懸念がある。水族館で増やした個体を食用捕獲するのであれば、これは保全事業というより、水産業、養殖業ではないのか。WAZAはこうした重要な論点にも触れなかった。

・・・ログインして読む
(残り:約2306文字/本文:約4054文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

諸坂佐利

諸坂佐利(もろさか・さとし) 神奈川大学法学部准教授

1968生まれ。明治大学大学院修了後、筑波大、日本大などの非常勤講師を経て現職。イリオモテヤマネコの保全に向けた条例制定に携わって以降、希少種保全、外来種対策、動物園・水族館政策に関して、法解釈学、法政策学的観点から研究。公益社団法人日本動物園水族館協会顧問。