AIとスマホで可能になった「便乗」システムで街を持続可能にしたい
2019年12月20日
インターネットができたことによって情報の流通は画期的に便利になった。手元に高性能のコンピューターを持たなくてもインターネット経由で便利に使うことができる。それに比べて人と物の流通は不便なままである。われわれはインターネットの「物理的移動版」の実現を目指している。誰もが自家用車を持たなくとも便利な移動手段が存在するという社会である。
筆者はAIの研究者だが、この会社の代表取締役社長を務めている。ここに至る経過を振り返りつつ、この技術が持つ可能性の大きさをお伝えしたい。
利用者から呼ばれたら走る「デマンドバス」という仕組みがある。2000年代の初め、このシミュレーション研究をAI研究の一環として産業技術総合研究所(産総研=つくば市に本部がある経済産業省傘下の国立研究開発法人の研究所)でわれわれの仲間が行なったのがそもそもの始まりだった。この研究で、車の台数が十分にあれば過疎地に限らず一定規模以上の街でもデマンドバスは有効であることが見出された。
筆者は2000年に産総研から函館にある公立はこだて未来大学に移っていたが、仲間の一人だった中島秀之氏も2004年に学長として赴任してきた。そこで、新たな研究プロジェクトをスタートさせたのである。
直接のきっかけは函館という場で疲弊する公共交通の姿を目の当たりしたことだ。しかし、公共交通が疲弊しているのは函館に限らない。最大の理由はみんな自家用車で移動するようになってしまったからである。
日本には「車がないと生きていけない」と言われる街が非常に多い。つくば市も函館市もその典型であり、1家族で複数の自家用車を持っている家も多い(ちなみに筆者は免許は持っているものの運転をしない。しかし「生きていけない」はずのつくば市でも函館市でも、なんとか生き延びてきた)。
最近は高齢者の危険運転が問題になっている。高齢者は免許を返上すればよいと言うのは、大都市の目線である。地方の街では高齢者が免許を返上したら買い物にも病院にも行けない。生きていけないのである。免許を返上してほしいのであれば、自家用車がなくても生きていける公共交通を確保しなくてはいけない。
それが「路線バスより便利でタクシーより安い」公共交通である。
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