日米地位協定に挑む安部集落のおばあ達
2019年12月26日
師走の沖縄。地元の新聞2紙の1面トップに掲載されたのは、キャンプ・ハンセン近くの金武町で米軍の照明弾が民家に近い田んぼに落下したとの記事であった。稲刈り前であれば火事になった恐れが強い。
2年前、緑ヶ丘保育園への部品落下から6日後には、CH53E大型輸送ヘリの窓(約7.7キロ)が普天間第二小学校の校庭に落下している。落下時は体育の授業中で児童54人が運動場におり、十数メートルの距離にいた小4男子の左肘に風圧で飛んできた物が当たり痛みを訴えた。
落ちてくるのは部品だけではない。部品落下の2カ月前の2017年10月11日には、高江の牧草地にCH53Eが墜落炎上している。また普天間第二小学校への窓墜落のちょうど1年前の16年12月13日には、夜間給油訓練に失敗したオスプレイが名護市東海岸の安部沖に墜落大破している。この件について中城海上保安部は複数回にわたり機長を含む当時の乗員への聴取を米軍に要請したが、米軍は応じなかった。日米地位協定17条では日米当局は「犯罪についての証拠の収集および提出を相互に援助しなければならない」と明記しているが、米軍はこれを無視したのである。
証拠物の機体についても米軍が回収したため触れられず、捜査は不十分な形で終結となった。結局、中城海上保安部は時効(3年)前の19年9月24日に航空危険行為処罰法違反の容疑で、オスプレイを操縦していた機長を氏名不詳のまま那覇地検に書類送検した。米軍機の墜落事故をめぐっては04年8月に沖縄国際大学で起きた大型ヘリCH53Dの墜落事故でも、米軍は県警の捜査協力を拒み、県警は今回と同様に被疑者不詳のまま書類送検した。その結果、那覇地検は不起訴としており、今回も不起訴となる見通しである。
オスプレイが墜落した安部地区は、大浦湾をはさみ新基地建設が進められる辺野古岬の対岸に位置する小さな集落である。墜落を契機に「オスプレイNO・大浦湾の環境を守る安部おばあ達の会」が立ち上がり、筆者はその活動にささやかな支援をしてきた。その安部おばあ達の会が、オスプレイ墜落からちょうど2年目の昨年12月13日〜16日、写真展「大浦湾の生きものたち」を大浦湾沿いの集落の瀬嵩(せだけ)にある名護市役所久志(くし)支所で開催したことは既に報告した通りである。
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