永野博(ながの・ひろし) 政策研究大学院大学客員研究員、日本工学アカデミー顧問
慶應義塾大学で工学部と法学部を卒業。科学技術庁に入り、ミュンヘン大学へ留学、その後、科学技術政策研究所長、科学技術振興機構理事、政策研究大学院大学教授。OECDグローバルサイエンスフォーラム議長を6年間、務めた。現在、日本工学アカデミー顧問など。著書:『世界が競う次世代リーダーの養成』、『ドイツに学ぶ科学技術政策』
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
世界ではとっくに同様の制度あり、何より継続が大事
令和2年度の当初予算案が12月20日に閣議決定された。ここに至る議論の中で、若手研究者に年700万円を最長10年間支援するという話がでてきた(朝日新聞デジタルほか各紙報道)。この数年、若手研究者がとりやすい資金は増えてきたが、小規模なものが多い。今回は大型の若手支援であり、私が以前から主張してきた金額、期間に近い。私は欧州における卓越した若手研究者支援の状況に関心を持ってきた。その経験をもとに、この新しいプログラムが成功するために気をつけなければいけないことを考えてみた。
まず、今回の案について調べると、これは令和元年度の補正予算による経済対策の一環としての事業として考えられているもので、そもそもの発端は平成31年4月の経団連の提言にあることがわかった。そこには「政府研究開発投資の方向性として、Society5.0の実現を目標とした『戦略的研究』と、特定の課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションの創出を目指す『創発的研究』の2つに注力すべきである」とある。この後者を実現する具体的な政策が今回の若手支援策ということになる。
では、欧州の若手研究者支援はどのような状況にあるのだろうか。
ドイツでは基礎研究を行うマックス・プランク研究協会のグループリーダー制度が知られている。1969年に創設され現在まで50年も続くこの制度では、