日本の森林で最も多い哺乳類にしてキープレイヤー
2020年01月01日
2020年の子年にちなみ、日本にすむ野ネズミの話をしたい。
ネズミというと、実験用のマウスか、夜の繁華街を走り回るドブネズミやクマネズミを思い浮かべる方が多いのではないだろうか。ペストなどの重篤な感染症の媒介者というイメージも強い。その一方で、日本の野山に多くの野生のネズミがすんでいることはあまり知られていない。ドブネズミのような人家周辺にすむネズミを家ネズミ、野山にすむネズミを野ネズミと呼ぶ。野ネズミは、山小屋などに入ってくることはあるが、基本的には人の営みとは無関係に生活している。
おおまかではあるが、日本列島にどのくらいアカネズミがいるか計算してみよう。私が調査を行っている岩手県の広葉樹林では、アカネズミは1平方キロメートルあたり約3000匹から25000匹が生息している。少なめに見積もって平均的な密度を3000匹とする。日本列島の面積(378,000 平方キロメートル)に森林率(約66%)と天然林率(約50%)とこの平均密度を掛ければ、アカネズミが日本全国にどのくらいすんでいるかを見積もることができる。答えは374,220,000匹となり、人間の3倍はいる計算になる。少なく見積もってもこの数なので、日本の哺乳類の中で最も数が多いのはアカネズミだろうと私は考えている。
国鳥(キジ)や国蝶(オオムラサキ)というものは関連する学会によって決められているが、国獣というものはまだ定められていないらしい。しかし、もし日本の国獣を選ぶとしたら、アカネズミこそ相応しいのではないかと私は思っている。
アカネズミを国獣に推す理由は、数や見た目だけではない。アカネズミは、日本の森林におけるキープレイヤーなのである。森からアカネズミがいなくなってしまったらどうなるかと考えれば、その果たしている役割が見えてくるだろう。
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