小島寛之(こじま・ひろゆき) 帝京大学経済学部教授
東京大学理学部数学科卒、塾講師を経て帝京大学経済学部専任講師、同助教授、2010年から現職。経済学博士。数学エッセイスト/経済学者として著書多数。『完全独習 統計学入門』(ダイヤモンド社)は12万部超のベストセラーとなっている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
日本のような男女の不平等度が高い社会では、数学の性差は大きくなる
数学オリンピックにおけるこの傾向は、他の国でも見られる。国内大会を勝ち抜いて世界大会に出場した各国の女子選手のほとんどは、エリート校(女子校かどうかは不明)に集中している。これは、上位成績の男子がさまざまな学校に点在していることと明らかな好対照をなしている。つまり、数学オリンピック選手の所属校は男女で明らかに性質が異なっているわけだ。
多くの統計的検証で、女子は男子に比べて数学に弱いことが報告されている。その一方、読解や口頭試験では男子に勝る能力を発揮する。数学の性差は、小学校3年生ぐらいから現れ、標準偏差の20パーセントほどの差がつく。それはあらゆる社会階層で共通に観測される事実である。
なぜ、女子が数学で男子に劣るのかについて、最近の研究では、生物学的な理由に求めないものが多い。それらの研究では共通に、「女子はプレッシャーに弱く、競争を嫌う傾向がある」ことに理由を見出している。女子は男女混合の環境下では、プレッシャーの影響で力を発揮できないというのだ。この性向は、実験室での報酬付きモニター実験でも検証され、また、国家的な大規模テストにおける点数の分布の性差からも実証されている。女子が読解や口頭試験には強いのに数学には弱いことは、数学が正解・不正解のはっきりした競争的な科目であることから来ると推測されている。
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