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旭日旗問題と、集団心理の深層

1年の始まりに考える、視覚シンボルをめぐる国家間の対立と和解のゆくえ

下條信輔 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

 正月によく見かけるものの一つに日の丸の旗がある。こうした「旗日」の他に国旗を見る機会というと、卒業式などの学校行事や、テレビで見るスポーツの国際大会ぐらいだろう。ところがこのところ、国際問題の文脈で「旗」が気になり出した。言わずと知れた旭日旗を巡る論争のことだ。旗という視覚シンボルを巡って、人々の心の深層に何が起きているか、あらためて考えてみたい。

東京パラリンピックと旭日旗問題

 直接のきっかけは韓国が2018年10月に開いた国際観艦式だった。韓国側は海上自衛隊に、艦旗である旭日旗を掲げないよう求めた。日本側が拒否したのに対し、韓国側がさらに反発、悪循環に陥った。欧米でも、著名デザイナーらが旭日旗をモチーフにした図柄で、世論の非難を浴びるケースが後を絶たない。旭日旗はいわば「腫れ物」扱いだ(ニューズウィーク日本版、2018年10月3日)。

 その後もいろいろあって、たとえば東京パラリンピック選手団長会議で、韓国側が競技会場への「旭日旗」持ち込みに異議を唱えた(聯合ニュース;エコノミックニュース9月15日による)。また英国のプロサッカーチームがで日本人選手を獲得した際、「関連情報のすぐ下に旭日旗を使った」として、韓国メディアから批判を浴びた。(中央日報電子版、12月20日;産経デジ IZAによる)。

拡大東京2020パラリンピックのメダルデザイン
 これらは旭日旗そのものの使用に対する反対だが、「拡張ケース」もある。たとえば先の選手団長会議で、韓国側は東京パラのメダルも旭日旗を想起させるとし、デザイン変更を要望した。中国がそれを支持したともいう(スポーツソウル日本版、9月13日)。実際にメダルを見てみると、中央の(日の)丸さえなく、強いて共通点を挙げれば、放射線に似たものがあるだけ。自然界には日光をはじめ放射線状の模様なんていくらでもあるが、こうなるとすべてアウトとなってしまう。

 このように見てくると「旭日旗に反対」と一口に言っても、いろいろな拡張のレベルがある。「旭日旗で応援するな」と「(隊のアイデンティティである)旗を掲げるな」では、要求のレベルが違う。旭日旗そのものとそれを連想させる(?)図柄では、話が違う。「禁止する」「推奨しない」「強要しない」「個別に必要に応じて注意・強制する」。それぞれ意味がちがう。

責める論理、反論する論理

 そもそも、旗とは何か。社会集団のプライドと団結のシンボルとして使われる。集団のアイデンティティーを象徴すると同時に、さらにそれを強化する作用を持つ。たとえばサンフランシスコでは数十年前から同性愛のシンボルであるレインボーの旗が見られたが、差別撤廃の動きとともに今や世界的な図案となった。

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筆者

下條信輔

下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授

カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

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