今こそ核兵器依存から抜け出し、真の平和に向けた対話による信頼関係を築け
2020年01月07日
2020年が明けた。昨年の「核」をめぐる国際情勢は、一言でいえば「迷路に入った1年」であった。なによりも、冷戦時代に締結された中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄は衝撃的だった。一方、2018年に歴史的首脳会談を行った米朝・南北朝鮮の関係も、昨年は進展なく終わってしまった。さらに、2017年に「核兵器禁止条約」が採択されて以降、核兵器国と「核の傘」国は条約に背を向けて、非核保有国との溝は広がる一方である。
この中で、日本の針路も全く見えてこない。2020年は戦後75年、核不拡散条約(NPT)締結50周年という節目の年だ。どうすれば、核兵器のない世界にむけて一歩でも進むことができるのだろうか。
INF全廃条約の破棄以降、次に懸念されるのが、2021年2月に期限を迎える新START条約の延長問題だ。今のところ、ロシアは対話の姿勢を見せているものの、一方で新たな極超音速弾頭ミサイルの開発を進めるなど、緊張緩和には程遠い。米国は、トランプ政権になって「核兵器の使用も辞さない」政策に転換し、やはり「より使いやすい、小型で精度の高い核兵器」の開発に取り組んでいる。このままでは相互の不信感が消えないまま、新START条約も消滅してしまう可能性が高い。
すなわち、米ロが核軍縮対話を進め、安全保障政策における核兵器の役割を低減させない限り、世界の核軍縮は進まないのである。米ロの対話の復活は、世界の核軍縮にとっても不可欠な要素であり、米ロにとっても、新たな核軍拡競争を避け、核戦争のリスクを低減させることにつながる。さらに冷戦時代と異なることとしてサイバー兵器やAIといった先端技術を用いた新たな「大量破壊兵器」の導入も危惧されており、こういった分野でも対話の開始が求められる。
NPTが1970年に発効しており、2020年に50年目を迎える。2015年の再検討会議では最終文書合意に至らず、2017年の核兵器禁止条約採択を経て、核兵器国や「核の傘」国と非核保有国のあいだで溝は広がっている。核兵器禁止条約は現在、34カ国が批准しており、おそらく早ければ今年にも条約の発効に必要な50カ国に達成するだろう。核兵器国と「核の傘」国は、核兵器禁止条約がNPTを弱める条約であるとして敵視してきたが、もはやそういった言い分だけでは説得力を持たない。禁止条約が発効することを前提に、どうやってNPT体制を維持し、そしてNPT第6条の軍縮義務を遂行していくか、真剣に考え始めなければならない。
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