メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

日本を弱体化させる大学序列化と入試制度

才能の流動性や多様な価値観を認めなければ、国際競争力はますます失われる

古井貞煕 豊田工業大学シカゴ校 (TTIC) 理事長

 こうして、自分の頭で考えるよりも,覚えこまされた技術や公式を素早く用いて、回答を導き出す指導が行われる。このようにして、本来初等中等教育で何を教育すべきかという理想とは別の要因で、教育の道筋が曲げられてきた。

大学で何を学んだかが問われない社会

 センター試験での序列に従って入学した大学を卒業すれば、大学で何を勉強したかは問われずに、「○○大学卒業」という肩書と面接技術で企業に就職でき、社会に出ていくことができる。入試や塾で与えられる序列は、それぞれの人の多様な価値の、ほんの一側面であるのにも関わらず、それが絶対であるかのように受け入れられ、与えられた場所と仕事で、他人任せの人生を送るようになる。

拡大日本では入試成績が人生を左右するほど絶対視されている

 大学は本来、プロフェッショナルとしての知識や能力を身に着ける、重要な場所であるはずである。従って、センター試験のような手段で、おおざっぱなレベル分けが行われたとしても、どこの大学に行けば何が学べるか、何が身に着くかによって、受験する大学が選ばれるのが、本来の姿であろう。

 筆者が働いているアメリカでは、学生は、学部の4年間で基礎学問を広く学び、通常、別の大学の大学院に進学して、専門能力を身に着け、修士あるいは博士の学位を取得し、社会で働くことになる。筆者の学術分野である人工知能(AI)では、学部で物理を学び、大学院でAIを学んだというような専門家が多い。

 日本では、大学教員として働くような場合は別として、一般社会で働く場合には、大学で何を学んだかが問われない。会社や役所では人事異動が定期的にあって、一人一人の専門性が重視されない。これが、あらゆる分野での日本の国際的競争力の低下の原因になっている。

・・・ログインして読む
(残り:約2237文字/本文:約4011文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

古井貞煕

古井貞煕(ふるい・さだおき) 豊田工業大学シカゴ校 (TTIC) 理事長

 豊田工業大学シカゴ校(Toyota Technological Institute at Chicago=TTIC) 理事長。1968年東京大学卒。工学博士。NTT研究所を経て、1997年より東京工業大学大学院計算工学専攻教授。2011年同名誉教授。2013年よりTTIC学長、2019年より現職。音声認識、話者認識、音声知覚、音声合成などの研究に従事。科学技術庁長官賞、文部科学大臣表彰、NHK放送文化賞、大川賞受賞、紫綬褒章受章、文化功労者。種々の学会から功績賞、業績賞、論文賞、Fellowなど受賞。国内外の学会の会長、学会誌の編集長などを歴任。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

古井貞煕の記事

もっと見る