日本はパリ協定の削減目標引き上げに消極的だが、市場メカニズムには固執
2020年01月21日
昨年12月、スペイン・マドリードで国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が開かれた。最大のテーマは、現在提出されている国別温室効果ガス削減目標を、次のCOP26(2020年)で引き上げることに各国が合意できるか、決定文書にどれだけ強い表現を盛り込めるか、だった。たとえ、いまの国別目標が達成されても、産業革命前からの世界の気温上昇は、今世紀末にはパリ協定の1.5度はおろか、2度未満を超えて、3度以上になる可能性が高いからだ。
結果的に、決定文書に盛り込まれた内容は弱いものになった。米国、オーストラリア、日本などの先進国や、中国、インドなどの新興国が強く反対したためとされる。また、小島嶼国や最貧国などが強く求めていた「損失と被害(Loss and Damage)」についても、目立った進展はなかった。温暖化による被害に対する新規および追加的な資金供与などを含むスキームの見直しについて、拡充する方向で議論していくことになったが、具体的な内容はこれからだ。米国をはじめ先進国は、賠償的な意味合いを持つ資金供与には強く反対している。
中・長期的資金については、主に資金を提供する先進国と主に支援を受ける途上国との対立は激しく、結論はないまま交渉は次回に持ち越された。
2020年から本格的に動きだすパリ協定の実施ルールに関しては、ポーランドでのCOP24から持ち越しになっていたパリ協定6条の行方が注目された。自国で減らせない温室効果ガスを他国に肩代わりしてもらい、その対価を支払う方法で、「市場メカニズム」とも呼ばれる。
その際、削減分を両国で計上すれば二重勘定になってしまうので、どう回避するか。京都議定書期間(2008~2020年)に減らした分(京都クレジット)をパリ協定に流用できるか、が焦点になった。
オーストラリア、ブラジル、インド、中国は、自国が持つ京都クレジットの2020年以降での利用を認めるように要求し、ブラジルは二重勘定も認めるよう要求した。だが、「温室効果ガス排出削減に逆行する」という反対意見が強く、議論は次回に持ち越された。これをもって、パリ協定実施への影響を危惧す声もあるが、6条がまとまらなくても、実施に支障はない。
日本はCOP25で、6条がまとまることにこだわった。なぜなら、日本政府は2国間クレジット(JCM)という独自のカーボン・トレードの制度を実施しており、
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