山内正敏(やまうち・まさとし) 地球太陽系科学者、スウェーデン国立スペース物理研究所研究員
スウェーデン国立スペース物理研究所研究員。1983年京都大学理学部卒、アラスカ大学地球物理研究所に留学、博士号取得。地球や惑星のプラズマ・電磁気現象(測定と解析)が専門。2001年にギランバレー症候群を発病し1年間入院。03年から仕事に復帰、現在もリハビリを続けながら9割程度の勤務をこなしている。キルナ市在住。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「わからない」のオンパレード。もしかすると次の反転がすでに始まっているかも
地質時代の正式名称として「チバニアン(千葉時代)」が認められた(論座『祝!「チバニアン」が地質年代の名称に決まった』)。そのお陰で5年前まではほとんど話題にならなかった「地磁気反転」という言葉もニュースなどで聞く機会が増えている。地球磁場の極性(N極S極の向き)の反転は複数の先駆的な研究(論座『チバニアンのかげに先人の偉業』)のあと、20世紀後半にようやく公認された。時間がかかったのは、精度の高いデータが少なかったからだ。その精度が上がり、ついに「地質時代区分のための時計代わり」に使われるようになったわけである。
地質時代の区分は、基本的には化石などの生命の痕跡の大きな変化を使う。ただし、人類誕生以降については、期間が短いので、化石とは無関係に地球物理学的な事件で決められている。それが最後の地磁気反転や、最後の間氷期ー氷河期ペアの開始時期や、今に至る間氷期の開始時期だ。
化石とは無関係に決められるとはいえ、氷河期から間氷期への移行は生態系の変動を起こしている。となれば、チバニアンの始まりの指標とされた地磁気反転も、生命の進化に影響を与えたのだろうと思われる方がいてもおかしくない。だが、この関係だけは未解明なのである。
地磁気反転自体の一般向け解説は、京都大学の地磁気世界資料解析センターや米国航空宇宙局(NASA)、米国海洋気象局など、多くの機関のホームページに載っている。ところが、地磁気逆転と生命の進化や生態系変化との関係をきちんと解説したものはほとんどない。
もしも地磁気反転が生命の進化に影響を与えるなら、それは太陽面爆発に伴う宇宙線や電磁気現象が関わっていると考えるのが自然である。太陽エネルギーによって引き起こされる超高層や磁気圏、宇宙空間の「気象」を「宇宙天気」と呼ぶが、それに地磁気反転が影響を及ぼすのが確実だからだ。その先の生物への影響となると急にわからないことだらけになるが、それでも想像できないわけではない。しかも、いま現在、地磁気反転がまさに始まっているのかも知れない。そこで、これらを含めた説明をしてみたい。
地磁気反転に関連した現象としては、
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