大島明(おおしま・あきら) 大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座環境医学教室招聘教員
1966年大阪大学医学部卒業、1967年大阪府立成人病センター調査部就職、1996年同調査部長、2007年3月定年退職。専門は、がんの予防、がんの疫学。地域がん登録全国協議会理事長(1998-2006年)、日本禁煙推進医師歯科医師連盟会長(2003-2015年)を務めた。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
世界と比べて高い日本の男性の紙巻きたばこ喫煙率を下げる政策が必要だ
毎年結果が発表される国民健康・栄養調査で、加熱式たばこの使用状況が初めて調査された。このデータから加熱式たばこの「紙巻きたばこ」喫煙率への影響を検討すると、20歳代と30歳代の男性の「紙巻きたばこ」喫煙率の減少が大きいことがわかった。加熱式たばこも健康に悪影響があり使用すべきでないとする意見もあるが、筆者は悪影響の大きい紙巻きたばこからのスイッチは勧められるべきだと考えている。しかし、そもそも日本の男性の喫煙率は他の先進国に比べ際立って高いままであることが大きな問題である。これは日本のたばこ政策が不十分だからであり、とくにたばこ産業による政策への干渉が大きすぎる。現在、日本政府はJTの株式のうち3分の1を保有しているが、JT法を改正して全株式の民間への放出を急ぐべきである。
1月14日に発表された平成30年国民健康・栄養調査結果によると、2018年における喫煙率(現在習慣的に喫煙している者の割合、20歳以上)は、男性で29.0%、女性で8.1%だった。吸っているたばこ製品の種類をたずねた結果は表1に示す通りである。なお、ニコチンを含む電子たばこは、日本では医薬品として規制されており、たばこ製品ではないと位置づけられているため、調査対象とはされていない。
表1を見ると「左記以外(=その他の組み合わせ)」の割合はごくわずかなので、上記の喫煙率から加熱式たばこのみの占める割合を差し引くと、紙巻きたばこの喫煙率とみることができる。この「紙巻きたばこ」喫煙率を計算すると、男性で22.6%、女性で6.9%となり、元の喫煙率と比較して男性では6%ポイント強、女性では1%ポイント強の減少であった。この減少は、紙巻きたばこ喫煙から加熱式たばこ使用にスイッチすることにより生じたものと考える。表1を見ればわかるように、20-29歳、30-39歳の年齢層では、加熱式たばこのみの占める割合が男性で40%前後、女性で30%前後と高かった。
さらに、これまでの国民健康・栄養調査のデータを用いて性・年齢階級別の「紙巻きたばこ」喫煙率の推移を図に示した。
2018年については、上記のような計算をして「紙巻きたばこ」喫煙率とした。加熱式たばこは2014年からテスト販売されたが、本格的に販売量が増えるのは2016年からである。しかし、2016年と2017年の調査ではたばこ製品の組み合わせを聞いていないため、この2年間の「紙巻きたばこ」喫煙率はブランクとした。2015年までは、調査で得られた喫煙率を「紙巻きたばこ」喫煙率とした。
男性では、20歳代と30歳代の「紙巻きたばこ」喫煙率の減少が他の年代に比して著しいことがわかる。女性においては喫煙者数が少ないため安定した数値が得られないが、「紙巻きたばこ」喫煙率は30歳代における減少が際立っていた。
世界保健機関のたばこ報告(WHO report on the global tobacco epidemic 2019、MPOWER 2019と略される)によると、
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