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地質学の歴史から見た「チバニアン」の決定

日本が認められて当然であるこれだけの理由

矢島道子 日本地質学会理事、科学史家

拡大くす玉を割って、チバニアン命名の正式決定を喜ぶ市原市の小出譲治市長(左)ら=2020年1月17日午後、千葉県市原市役所、高室杏子撮影
 国際地質科学連合が2020年1月17日、約77万4000年前から12万9000年前までを「チバニアン」と呼ぶと決めた。千葉県市原市にある地層がこの時代の始まりを明確に示していると認定したうえでの決定だ。地質時代の時代分けは階層構造になっており、その大きな区分から順に言うと、新生代―第四紀―更新世―チバニアンである。
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 この報告を聞いて、当然の結果だと思った。日本には第四紀の地層が広く分布しており、データがそろっていたからだ。しかもこの時代の始まりは「最後の地磁気反転があったとき」で、地磁気が反転するという驚くべき現象を京都大学の松山基範(1884 – 1958)が発見していたのだ。この先駆的な業績を世界の地質学者はみな知っている。チバニアンは認められるべくして認められたのである。

地質時代の名前の変遷

 地球は46億年の歴史を持っている。それと比べると非常に短い日本の歴史ですら、いろいろな時代に分けられている。土器の形式とか、政治の中心地の名前とか、天皇の名前などによってそれぞれの時代が名付けられている。考えてみれば統一性に欠けるが、その方が使いやすいからだろう。それでは地球はどんな時代分けがなされているのだろうか。

 映画『ジュラシック・パーク』のジュラシック(ジュラ紀)、テレビ番組『カンブリア宮殿』の名前のもとであるカンブリア紀などはみんなが知っている地質時代の名前であろう。カタカナの名前だけでなく、漢字の名前もある。恐竜の好きな人ならば白亜紀も知っているだろう(余計な話だが、映画『ジュラシック・パーク』に出てくる恐竜はほとんど白亜紀のものである。「白亜紀パーク」では格好悪かったのだろう)。

 地質時代の名前のもとはほとんど西欧にある。ジュラ紀はフランスとスイスの国境地帯にあるジュラ山脈、カンブリア紀はイギリス・ウェールズ地方のカンブリア山脈またはカンブリア部族、白亜はドーバー海峡の両側の石灰岩(ここの石灰岩は白い)など。こうした名前が付いているのは、地質学が西欧ではじまったからだ。

 さて、地質時代の名前はどのように付けられていったのだろうか。チバニアンが第四紀と知っている方は第一紀や第二紀がないことを不思議に思われなかっただろうか。実は、

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筆者

矢島道子

矢島道子(やじま・みちこ) 日本地質学会理事、科学史家

1950年生まれ。1981年 東京大学大学院理学系研究科修了。理学博士(古生物学)。東京成徳大学中・高等学校教諭などを経て、現在、首都大学東京などで非常勤講師(科学史)。主な著書に『地球からの手紙』(国際書院)、『化石の記憶―古生物学の歴史をさかのぼる』(東京大学出版会)、『地質学者ナウマン伝』(朝日選書)など。日本地質学会125周年記念事業(2018年)を実行した。