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あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」論争再燃

現代アートは文脈を取り戻せるか? 出品作家らの対話企画と作品から考える

粥川準二 県立広島大学准教授(社会学)

 その隣の部屋には、小銃のレプリカのようなものがずらりと並んでいる。砲台のようなものもある。床の間には、大砲の薬莢が並び、その一部は生花で花を生ける「花器」のような形に加工されている。これらは榎忠の〈LSDF〉という作品だった。

 筆者らはランチを2階で食べることにした。そこで同じテーブルに座った人たちから冒頭のような話を聞いた。

 その2階にも小さめの作品たちが並んでいた。池内美絵〈Alice2015〉は、作者自身の排泄物でつくったという小さな人形である。そのほか、「使用済みコンドーム」でつくったベビーシューズや「彼の精液を拭き取ったティッシュ」でつくったリースも展示されていた。いずれも説明文がないとその材料を知ることはできなかっただろう。1階の榎忠とのコラボ作品もある。食事をする場で展示するのにふさわしいかどうかは議論の余地があるかもしれない。

柳幸典の作品。干渉するための椅子には大漁旗がかけられていた拡大
 柳幸典の〈ヒノマル・イルミネーション〉は、赤と白のネオンが点滅して、日の丸や日章旗(と日蝕?)を映し出すインスタレーション作品である。この作品は、1961年に建設されたもののわずか4年で閉鎖された映画館「百島東映」を改装した「日章館」に展示されていた。「百代の過客」を「反日プロパガンダ」と非難する人たちの感想が気になる。彼らは日の丸が好きなはずだ。

 17日の午前中、廃校になった中学校を改装した「ART BASE 百島」で、あいトリではVRを応用した作品も印象的だった小泉明郎の映像作品〈夢の儀礼(帝国は今日も歌う)〉を観た。これも天皇制にかかわる作品だ。同日午後の対話企画で小泉が話したことなどによると、この作品は、彼が子どもの頃に見た夢にヒントを得たものだという。その夢では、小泉の父が「ニワトリの餌にされるために」警察のような人たちに連れて行かれてしまった。また小泉の父は天皇制に批判的な人だった。しかしある日、小泉が天皇制を扱った作品を制作したときには、そのことに「傷ついた」と彼に伝えたという。

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筆者

粥川準二

粥川準二(かゆかわ・じゅんじ) 県立広島大学准教授(社会学)

1969年生まれ、愛知県出身。フリーランスのサイエンスライターや大学非常勤講師を経て、2019年4月より現職。著書『バイオ化する社会』『ゲノム編集と細胞政治の誕生』(ともに青土社)など。共訳書『逆襲するテクノロジー』(エドワード・テナー著、山口剛ほか訳、早川書房)など。監修書『曝された生 チェルノブイリ後の生物学的市民』(アドリアナ・ペトリーナ著、森本麻衣子ほか訳、人文書院)。

 

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