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あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」論争再燃

現代アートは文脈を取り戻せるか? 出品作家らの対話企画と作品から考える

粥川準二 県立広島大学准教授(社会学)

 「撮影が禁止されているので、デッサンしている人もいましたよ」「ネット中継している人とか…」「スタッフに詰め寄っている人もいました」

 たまたま同じテーブルに座ったアート関係者3人がそう教えてくれて、筆者は興奮を禁じ得なかった。

 ここは百島。尾道港からフェリーで50分、高速船で25分のところにある小さな島である。面積は3平方キロメートルに過ぎず、人口は500人にも満たない。その大半は高齢者で、子どもはわずか。「昔はアサリが採れたが、ある時期から採れなくなった」と、島の男性は言う。空き家も多い。言葉を選ばずにいえば、過疎と高齢化が進む離島であろう。

拡大厳戒態勢で開かれた対話企画=2019年11月17日、木村静撮影
 2019年11月16日、広島市に住む筆者らは尾道を経由して、この島を訪れた。この島では、2020年に開催される国際芸術祭「ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO」のプレイベント「百代の過客」が開かれていた。数カ月前、このイベントに、あいちトリエンナーレ2019で話題になった「表現の不自由展・その後」の出品作家である大浦信行や小泉明郎の作品が展示されることが知られると、ネットがざわついた。「天皇ヘイト」「反日プロパガンダ」といった言葉がSNSをかけ巡った。

 「あいトリ」では、「表現の不自由展・その後」の展示中止のことばかりが話題になった印象がある。もちろん表現の自由をめぐる問題は重要だ。その一方で、個々の作品自体が議論されないのは惜しい。だから筆者はあいトリについて、できるだけ作品そのものに注目して記事を書いた。16日と17日に「連続対話企画」があると知り、今回も作品自体を観て伝えよう、と決意して百島に向かった。

個性的な作品たち

 尾道港から百島の福田港へのフェリーで、偶然、あいトリの芸術監督・津田大介と会った。16日の対話企画にのみ入場者として参加するらしい。

 筆者らは昼頃に百島に着いた。古民家を改修した「乙1731-GOEMON HOUSE」というお店でランチを食べたのだが、そこにも作品が展示されていた。ランチを注文し、待っている間に観てみたところ、いきなり驚いた。柳幸典〈籠の鳥〉は、木製の檻のような一角に飾られた日本刀である。よく見ると、『朝日新聞』を嫌いな人たちが変えたいと望んでいる法律の条文が刃に刻まれていた。

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筆者

粥川準二

粥川準二(かゆかわ・じゅんじ) 県立広島大学准教授(社会学)

1969年生まれ、愛知県出身。フリーランスのサイエンスライターや大学非常勤講師を経て、2019年4月より現職。著書『バイオ化する社会』『ゲノム編集と細胞政治の誕生』(ともに青土社)など。共訳書『逆襲するテクノロジー』(エドワード・テナー著、山口剛ほか訳、早川書房)など。監修書『曝された生 チェルノブイリ後の生物学的市民』(アドリアナ・ペトリーナ著、森本麻衣子ほか訳、人文書院)。

 

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