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小泉環境相の「正直、開き直り、アクション」

COP25で見せた「石炭中毒」への対応は本気? パフォーマンス?

明日香壽川 東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授

 小泉進次郎環境大臣の誕生から、まもなく半年になる。ここでは、エールの思いも込めて、彼のこれまでの環境大臣としての言動、特に温暖化問題に関する認識や発言を分析評価する。

COP25で記者団の取材に答える、小泉進次郎環境相=2019年12月、マドリード、松尾一郎撮影COP25で記者団の取材に答える、小泉進次郎環境相=2019年12月、マドリード、松尾一郎撮影

正直だけど

 小泉氏は、大臣に就任したばかりの2019年9月、ニューヨークでの温暖化問題に関する国連会議に出席した。「石炭火力発電をどう減らすか」と外国人記者に聞かれて、何も答えられなかった(文字通り数秒間絶句していた)。このような反応に対しては「政治家として稚拙」という批判もでた。しかし、ある意味で彼の対応は非常に正直だともいえる。なぜなら、今の日本の石炭火力推進政策や温室効果ガスの排出削減数値目標は、実質的に経産省が決定権を持つエネルギー基本計画によって、ほぼ一意的に決まってしまうからだ。

同情もするけど

 そして最新の第5次エネルギー基本計画では、省エネと再エネの軽視、および石炭の重視が明記されている。すなわち、環境省は石炭火力推進政策に関しても、温室効果ガス排出削減目標に関しても、強く関与できるような仕組みにはなっていない。そして、閣議決定されたエネルギー基本計画を覆すような発言をするのは、官僚はもちろん、大臣でも無理なのである。

 もちろん、脱石炭や数値目標の引き上げに関しては、環境省もただ黙っているだけではなく、国内で具体的な議論を始めたいと思っている。しかし、エネルギー基本計画の改定は通常は3〜4年というサイクルであり、次回の改定は今から1年あるいは2年後である。それを理由に、これまで経産省も官邸も乗り気ではなく、それでは環境省は何もできない。なので、絶句というのは、「正しい」反応だとも言えるし、正直に同情する。

自虐的な「石炭中毒」

 しかし、同情はするものの、最近の彼の言葉には違和感も感じる。例えば、2019年12月のスペイン・マドリードで、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)があった。そこでは、各国政府代表団やNGOが記者会見を実施し、交渉の進捗(しんちょく)状況や各組織のポジションなどについて説明した。会期終盤に近づいた12月12日、日本政府が記者会見を行い、小泉環境大臣が一人で説明し、一人で質問に答えた。

 記者会見で小泉大臣は、「石炭中毒」という、多少自虐的な言葉を使って日本の状況を説明した。なので、少なくとも温暖化対策において石炭火力が重要な問題であることは認識している。彼は、「自分は日本の石炭火力推進政策に関しては、なんとか変えようと努力した。具体的には、日本が公的資金を石炭火力技術の輸出に使っていることをなんとか止めさせるよう調整した。しかし、結果は

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