2009年の新型インフルエンザと1976年の「豚インフルエンザ事件」からの教訓
2020年02月04日
今回の新型コロナウイルスがどのくらい危ないものなのかは、まだはっきりしない。もともとコロナウイルスは風邪の原因ウイルスとしてありふれたもので、それほど危険でないと考えられていた。しかし、2002年に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)や2012年に中東で流行が始まったMERS(中東呼吸器症候群)は、コロナウイルスでありながら致死率が高く、専門家の認識を一変させた。
SARSの患者数は2002年11 月〜2003年8月で中国を中心に8096人で、うち774人が死亡した。ここから致死率を計算すると9.5%となる。日本で患者は出てない。結局、流行は続かず、2003年7月にWHOが終息を宣言した。
MERSは中東地域では今も断続的に患者が発生している。日本では患者が出ていないものの、韓国では2015年に38人が死亡し、2018年にも中東に出張していた男性の発症が確認された。WHOによると、致死率は34.4%ときわめて高い。
下は2月1日付ニューヨークタイムズに載った図を日本語にしたものだ。縦軸は対数目盛りで表示された致死率である。横軸は患者1人が何人にうつすかを示した数字だ。
これを見ると、新型コロナウイルスについてはまだまだ不確実性が大きいことがわかる。それでも、最悪のケースでも致死率はMERSやSARSより低い。対数目盛りであるから、実際には格段に低いといえる。さらに最善のケースだと、季節性のインフル(普通のインフルエンザ)とほとんど変わらない。もっとも、普通のインフルエンザに対し、私たちは「結構こわいもの」という認識を持つべきだとは思う。
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