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首相も「量子」、新聞も全面で「量子」

25年前の量子記者は「成長戦略だけの話ではない」と思う

尾関章 科学ジャーナリスト

 「量子」が社会の関心事になり始めたことを物語るのは、この記者解説だけではない。去年暮れには同じオピニオン面の「月刊安心新聞plus」欄で、客員論説委員の神里達博・千葉大教授が「量子コンピューターの開発」について論考を寄せている(朝日新聞2019年12月20日付朝刊)。

施政方針演説に「量子」

拡大衆院本会議で施政方針演説をする安倍晋三首相=1月20日、西畑志朗撮影
 さらに驚くのは、今年1月20日、安倍晋三首相の施政方針演説に「量子」のひとことが飛びだしたことだ。「成長戦略」の一節で「次世代暗号などの基盤となる量子技術について、国内外からトップクラスの研究者・企業を集める、イノベーション拠点の準備を進めます」と述べている。ここでは、量子コンピューターではなく量子暗号を例に挙げているが、これも量子情報科学の技術であり、状態の重ね合わせを活用する。

 量子ブームに火をつけたきっかけは去年10月、米国のIT大手グーグルが量子コンピューターの最新記録を英科学誌natureに発表したことにあるのだろう。従来方式のスーパーコンピューターなら1万年かかる計算を200秒でやってのけた、というのである。この比較には批判もある。量子方式と従来方式には、それぞれ得意不得意があるからだ。ただ、私が95年に量子コンピューターの記事を書いたとき、その現物は世界に一つもなく、それは物理学者の想念に過ぎなかった。ところが、今や実在の技術となっている。量子力学の不可解さが超常現象ではなく、物理学のリアルな一面であることが証明されたのだ。この変転は大きい。

 しかも、発表したのはGAFAの一角、グーグル。

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筆者

尾関章

尾関章(おぜき・あきら) 科学ジャーナリスト

1977年、朝日新聞社に入り、ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。2013年に退職、16年3月まで2年間、北海道大学客員教授。関心領域は基礎科学とその周辺。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。週1回の読書ブログ「めぐりあう書物たち」を開設中。

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