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新型コロナの猛威の中で、子宮頸がんの現状を考える

ウイルス感染という点は同じ、年間死亡者は2800人

小島正美 食・健康ジャーナリスト

 新型コロナウイルスによる感染症が世界的に猛威を振るっている。同じようにウイルス感染によって起きる病気に子宮頸(けい)がんがある。実は日本国内では子宮頸がんで毎日、およそ8人が死亡している。仮に新型コロナウイルスで毎日、8人の死亡ニュースが流れれば、相当な恐怖感が漂うはずだ。なぜ、子宮頸がんへの関心が低いのか。改めて子宮頸がんとワクチンの現状を考えてみたい。

毎日の「数字」発表で不安広がる

 新型コロナウイルス感染症に関する報道を見ていて、一番不安を感じるのは、毎日、テレビや新聞を見るたびに「きょうの感染者、死亡者は○○県で○○人」と数字が徐々に増えていくときだ。

愛知県で新たに9人の感染が判明したと伝えるCBCニュース=3月3日

 もちろん、ウイルスの正体がよく分からないことや治療薬がないことも不安感の大きな要因だろう。しかし、たとえ、感染者や死亡者の数字が少ない場合でも、毎日繰り返し、その数字を聞かされ続けるとだれだって不安感や恐怖感が増すだろう。

 では、子宮頸がんはどうだろうか。子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起きる。主に性的接触で感染し、性的接触の経験のある女性の6~8割は感染しているといわれる。幸い大半は感染しても体内の抗体で撃退される。

 新型コロナウイルスとHPVが大きく異なるのは、感染してから発症するまでの期間だ。新型コロナウイルスは感染から発症までが2週間程度と短いのに対し、子宮頸がんのウイルスは感染してから子宮頸がんに進行するまでに数年~数十年かかる。すぐにがんになるわけではないため、心理的にはその分だけ恐怖感が低いのかもしれない。

子宮頸がんで年に2800人が死亡

 では、現実にはどちらが深刻だろうか。

 新型コロナウイルスの感染者は3月5日時点でクルーズ船ダイアモンド・プリンセス号に乗っていた人たちを含め1057人、死亡者は12人だ。

子宮頸がんの死亡者数の推移

  一方、全国がん罹患データ推計値によると子宮頸がんにかかる女性(罹患者)は年間1万759人(2015年)で、厚生労働省の人口動態統計によると死亡者は年間2871人(2018年)だ。ここ数年は、1年間にざっと1万人が子宮頸がんにかかり、2800~3000人が毎年、死亡している。これを1日あたりに換算すると毎日29人が子宮頸がんと診断され、毎日7.7人が死亡していることになる。日本産科婦人科学会によると、最近は患者、死亡者とも増加傾向にある。

 仮にこの数字が新聞やテレビで連日「きょう全国で8人の女性が子宮頸がんで死亡しました」と繰り返し報道されたら、人々は間違いなく深刻だと受け止めるはずだ。

 新型コロナウイルスの

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