96歳で逝去、量子電磁力学をつくり、核軍縮を語り、宇宙スケールの未来を見通した
2020年03月10日
人類が宇宙に広がっていく未来を構想し、核実験禁止より核兵器そのものの縮減を目指すべきだったと省み、現代物理学の屋台骨となる論文を20代で書いた「伝説の物理学者」フリーマン・ダイソン教授が2月28日に亡くなった。96歳だった。
1923年に英南東部バークシャーで生まれた。幼いときから数学の才能を発揮し、17歳からケンブリッジ大学の有名な数学者G.H.ハーディーのもとで数学を学んだ。英国の空軍で数学者として働いたあと米国のコーネル大学大学院物理学科へ。そこで、ドイツ生まれの核物理学者ハンス・ベーテの指導を受け、1949年に「トモナガ・シュウィンガー・ファインマンの放射理論」という歴史的な論文を発表した。これによって量子電磁力学が体系化され、その後の素粒子物理学やエレクトロニクス発展の基盤となった(そして、朝永振一郎、ジュリアン・シュウィンガー、リチャード・ファインマンの3人は1965年にノーベル賞を受けた)。
この論文発表から4年後に、アインシュタインが晩年を過ごしたことで有名なプリンストンの高等研究所の教授に就き、何の義務も課せられずに好きなことを研究する生活を亡くなるまで続けた。理論物理学にとどまらず、純粋数学、原子力工学、宇宙工学、生命の起源、地球外生命探査、そして核軍縮や安全保障論など、多岐にわたる論文や論考を残した。
教授の訃報を知り、ここに37年前のインタビューを記事として公開する。驚くべきことに内容はまるで古びていない。入社5年目、初めての海外取材だった。取材ノートには「意外に小さな建物。レンガ造りの古風なたたずまい。周りは芝生と林。他に建物は一切見えない」とメモがある。
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――人類は宇宙に植民地をつくるべきだと主張されていますが、そんなことができるのでしょうか。
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