メルケル首相が語った「全人口の60~70%が感染する」の本当の意味
2020年03月15日
3月14日現在、新型コロナの感染は世界の110カ国に広がり、感染者は12万人、死者は4700人を超えている。政府は国民に外出の自粛、休校、そしてスポーツ・文化イベントの自粛を要請したが、その社会的影響は大きく、市民生活も経済も大きく混乱している。新型コロナ問題はいつまで続き、どのような形で収束するのだろうか。
この見通しを考える上で欠かせないのが、「集団免疫」についての正しい理解である。集団免疫とはなにか。政府の対策の根拠である専門家会議の見解や各国の状況をよみときながら、そこに登場する集団免疫の考え方やしくみについて検討し、新型コロナ対策の今後を考えてみたい。
新型コロナウイルス感染症への対策を検討するため、安倍首相は第一線の研究者を構成員とする専門家会議(座長=脇田隆字・国立感染症研究所長)を設置。専門家会議は2月24日、「ここ1~2週間が、急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる」との見通しを発表していた。
この「2週間後」にあたる3月9日、専門家会議が開かれ、次のような見解を示した。
要するに、2週間様子を見た結果、爆発的な感染拡大には進まなかったのだ。少なくともこれで医療崩壊が起こるような状況が避けられたことは明らかである。そうであれば、所期の目的を達成したのであり、社会的な混乱の急速な拡大を避けることも考えて、自粛をそろそろ緩和してもいいと考えられる。ところが、政府はそうはしなかった。専門家会議の見解を受けて、安倍首相は自粛をさらに10日間継続することを国民に要請し、選抜高校野球大会も中止が決まった。
ここに専門家会議の見解と首相の判断の間に食い違いが見られる。専門家会議は、北海道知事が2月28日に出した緊急事態宣言の効果判定は2週間後の3月19日になると報告したのであって、全国の状況については「爆発的な感染拡大には進まなかった」という結論を出している。全国的な自粛を10日間延長する明確な根拠はないのだ。だが14日の記者会見でも、首相は改めて自粛の継続を国民に求めた。それでは、どのような状況になったら自粛を解除するのだろうか。感染者の増加はいつピークを迎えて、減少に転ずるのだろうか。
ここで注目されるべきなのが、専門家会議が示した「集団免疫」という考え方だ。専門家会議は、2月24日に「今後1~2週間が瀬戸際」との見通しを示した後、1週間後の3月2日にも開かれ、集団免疫について言及している。ほとんど報道されなかったが、会議が表明した見解のなかに、次のような重要な一節があった。
「感染症のなかには、大多数の人々が感染することによって、感染の連鎖が断ち切られ、感染していない人を保護する仕組みが機能できるものもあります」。これが集団免疫だ。
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