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身寄りなきネコが問いかける「動物愛護法の矛盾と欠陥」

公害・感染症・生態系破壊の温床ともなり得るわが国の欠陥制度をめぐって

諸坂佐利 神奈川大学法学部准教授

 思うに、屋外に放出されれば、そのペット自身、寒暖風雨にさらされ、天敵からの攻撃、感染症、交通事故などの危険にも常に見舞われることとなる。これは健康保持、安全確保の観点から消極的虐待(ネグレクト)に当たる恐れはないだろうか。動物愛護法にいう「愛護」という概念の中には、一部「動物福祉」(animal welfare)という意義を認めるが(第2条第2項)、この「放し飼い」は、飼い主がペットを愛し保護するという責任を放棄した、反「福祉」的状態以外の何物でもないのではないか。

カエルや昆虫は虐待しても罰則なし

 もう一点は、動物愛護法がいかなる動物をその適用範囲(保護対象)とするか、法文上、判然としない点だ。対象とは「愛護動物」だと考えている方もおられるかもしれないが、その解釈は間違いである。愛護動物という用語は、動物への殺傷、虐待に対する処罰規定(第44条)で初登場し、処罰の対象範囲を指示しているだけで、法の適用範囲を指す用語ではない。

拡大放し飼いされたペットはさまざまな危険にさらされる

 またその愛護動物も哺乳類、鳥類または爬虫類に限定されているので、例えば両生類であるカエルや、魚、昆虫を合理的理由・根拠もなしに殺傷しても動物愛護法で処罰されることはない。かといって、両生類や昆虫は、本源的に「愛護」の対象から外してもよいとすると、法の理念と合致しなくなってしまう。なぜなら同法の目的は「生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに…人と動物の共生する社会の実現を図ること」だからである(第1条)。法の趣旨、理念から推断するに、両生類、魚類、昆虫などもペットとして飼養する場合には、当然のごとく、愛玩動物として愛護の対象とされるなければならないだろう。

 一方で、動物愛護法の教科書を確認すると、どの教科書にも「動物愛護法の対象動物とは、人とのかかわりがある動物」、「人が所有または占有し、かつその者の管理下にある動物」、すなわち「純粋な野生状態にある動物以外の飼養動物」と解している。ここでポイントになるのが「人とのかかわり」「人の所有、占有、管理下にある動物」「飼養動物」という考え方だ。

法のグレーゾーンにいるノラネコ、アライグマ…

 しかしそうすると、例えばノラネコは、果たして動物愛護法の適用を受けるのか対象なのかという疑問も浮上する。確かにノラネコも地域社会という広義の「人とのかかわり」の中でくらしている。他方、ノラネコへの虐待、殺傷行為は、同法に基づき処罰される(第44条)。そういった観点からすると、ノラネコは動物愛護法の保護対象かと思われる。

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筆者

諸坂佐利

諸坂佐利(もろさか・さとし) 神奈川大学法学部准教授

1968生まれ。明治大学大学院修了後、筑波大、日本大などの非常勤講師を経て現職。イリオモテヤマネコの保全に向けた条例制定に携わって以降、希少種保全、外来種対策、動物園・水族館政策に関して、法解釈学、法政策学的観点から研究。公益社団法人日本動物園水族館協会顧問。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです