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新型コロナの感染爆発をいかに遅らせるか

新規感染者の増加を抑えるために、もう一段の感染防止対策を

唐木英明 東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長

 3月26日現在、新型コロナの1日当たりの感染者数が500人を超えている国は、世界保健機関(WHO)が把握しているだけで、イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、スイス、英国、オランダ、オーストリア、米国、ブラジルの10か国である。中国、韓国、イタリアは感染爆発を起こし、厳重な対策により収束に向かっているものの、その他の国が同様の危機的な状況に向かっているように見える。そして、日本も例外ではない。

感染爆発と医療崩壊

 新型コロナの恐ろしい点は、感染速度が速く、医療機関が受け入れられないほど多数の感染者が短期間に発生する感染爆発が起こり、医療崩壊に陥ることである。

拡大日本では、1人の感染者が1.08人に感染させるという割合で感染が拡大している
 日本では、3月初旬に毎日50人内外の感染者が見つかっていたが、その数は次第に増えて、3月28日には200人に達した。感染者は、たとえ症状がなくても、最低2週間は指定病院に入院することになっている。3月27日現在の感染者は1525人、うち372人は退院しているので、入院している人は1153人である。入院病床は4800程度で、現在はまだ余裕がある。しかし、中国ではピーク時には1日に約4000人、イタリアでは6000人を超える感染者が見つかり、医療崩壊が起こった。

 感染者の8割程度は軽症あるいは無症状で、風邪程度の治療で完治する。しかし2割程度は重症になり、高度の医療が必要になる。もし、重症者だけを指定病院に入院させれば、利用できるベッド数は一気に5倍になる。厚労省は、感染爆発を見込んで、軽症と無症状の感染者は自宅療養に切り替えることにした。この処置で、1日に1000人の感染者が出ても、重症者は200人なので、3週間は受け入れができる。その後は、退院と入院のバランスが取れれば、なんとか対応ができるだろう。逆に言えば、感染者数は多くても1日1000人以内に抑える必要があるのだ。

日本とイタリアの違い

 日本でも新規感染者の数は右肩上がりに増加しているが、今のところは他国に比べれば、まだ緩やかな増加に抑えられている。日本はなぜ感染爆発を起こさなかったのか。

拡大イタリアでは1人の感染者から1.2人が感染し、急速に感染が拡大した
 感染の速度は、1人の感染者が何人に感染させるのかで決まる。イタリアの例を見ると、1人の感染者が1.2人に感染させた。この数はそれほど多くは見えないが、その仕組みは定期預金の複利と同じだ。利子にまた利子が付く複利では短い期間に預金が大きく膨らんでいくように、感染がまた新たな感染を引き起こしてしまう。イタリアのように感染者が毎日1.2倍になる日が続くと、日ごとに新規感染者が急増し、1か月余で1000倍近くにもなってしまう。イタリア政府は個人の行動を制限する厳しい対策をとって、1人の感染者が感染させる人数を1.0人前後まで減らしたため、1日の感染者数は減少に向かっている。

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筆者

唐木英明

唐木英明(からき・ひであき) 東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長

1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て、東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを務めた。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。著書「不安の構造―リスクを管理する方法」「牛肉安全宣言―BSE問題は終わった」など。

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