大学の責務を果たし、学問の自由を守ることが、学生と地域の安全・安心につながる
2020年04月03日
若者が新型コロナウイルスに感染する例が相次いでいる。京都産業大では懇親会で学生たちに感染が広がった。教育現場は、配慮が足りなければ教室内だけでなく様々な場所で、クラスターの発生につながる「密閉」「密集」「密接」の3条件が重なってしまう。
誰もが安心して学べる状況をつくるには、どうすればよいのか。ほかならぬ「学問の自由を守ること」こそが、学生や地域住民をウイルス感染のリスクから守り、安心・安全につながることを訴えたい。
政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(専門家会議)は3月2日、「全国の若者の皆さんへのお願い」と題する見解を発表した。若者世代は自身の行動が感染拡大に与える影響を知り、行動変容することを期待するとしている。
例えば、地域の感染者が少なく通学圏が広範囲でないときは、新学期の学生移動後にウイルスの潜伏期を超える十分な休業期間を取ったのち、スロースタートでも授業が可能になるであろう。しかし、どれほど事前の対策を取ったとしても、感染者が現れる可能性を完全にゼロにはできず、常にリスクは残る。私たち室蘭工業大の大学教員たちは「学生たちも自分たちも、地域や家族の人たちも、みんな健康でいたい」と願いつつ、できる限り安全な授業再開の方法を模索している。誰一人として、授業再開をあきらめる声を上げる者はない。大学は自らの責務として、開講の努力を続けるのである。
いざ授業を開始すると、日本人学生や留学生たちが国内外の感染拡大地域から移動してくるかも知れず、地域には不安が生じるだろう。不幸にして感染者も出るかもしれない。潜伏期が1〜2週間であるため、前週や前々週の教室で二次感染が起きなかったかを調査することにもなる。
大学では、感染が疑われる対象者が一瞬にして数百人規模に膨れ上がるため、検査崩壊や医療崩壊の引き金になりかねない。ひいては半年以上の教育崩壊を招くことにもなるだろう。こういった心配に対し、「地域社会全体が安心できる状況になるまで、授業を再開すべきではない」との声もある。一方で「では、どれだけ待てばよいのか」と、先の見えない不安への嘆きもある。
もし、大学がオンライン授業もしなければ、学生たちが時間を持て余し、市中を行き来するようになることは容易に想像つく。しっかりとした授業こそ、感染拡大を防ぐセーフティーネットとなりうるのである。
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