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授業こそコロナ拡大を防ぐセーフティーネットだ

大学の責務を果たし、学問の自由を守ることが、学生と地域の安全・安心につながる

安居光國 室蘭工業大学くらし環境系准教授

 若者が新型コロナウイルスに感染する例が相次いでいる。京都産業大では懇親会で学生たちに感染が広がった。教育現場は、配慮が足りなければ教室内だけでなく様々な場所で、クラスターの発生につながる「密閉」「密集」「密接」の3条件が重なってしまう。

 誰もが安心して学べる状況をつくるには、どうすればよいのか。ほかならぬ「学問の自由を守ること」こそが、学生や地域住民をウイルス感染のリスクから守り、安心・安全につながることを訴えたい。

大学は開講への努力を続ける

 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(専門家会議)は3月2日、「全国の若者の皆さんへのお願い」と題する見解を発表した。若者世代は自身の行動が感染拡大に与える影響を知り、行動変容することを期待するとしている。

拡大記者会見する政府の専門家会議=2020年4月1日、川村直子撮影
 その若者世代が多く集まる場所が大学だ。社会から不安を持たれながら、学生自身の健康だけでなく、その家族、地域住民および教育スタッフへの配慮が必要になる。3月19日の専門家会議は、感染拡大の状況を踏まえた地域ごとの行動をとることも求めている。そこで大学は設置地域ばかりではなく、居住地や通学範囲、帰省先を考慮して、授業再開を検討しなければならない。

 例えば、地域の感染者が少なく通学圏が広範囲でないときは、新学期の学生移動後にウイルスの潜伏期を超える十分な休業期間を取ったのち、スロースタートでも授業が可能になるであろう。しかし、どれほど事前の対策を取ったとしても、感染者が現れる可能性を完全にゼロにはできず、常にリスクは残る。私たち室蘭工業大の大学教員たちは「学生たちも自分たちも、地域や家族の人たちも、みんな健康でいたい」と願いつつ、できる限り安全な授業再開の方法を模索している。誰一人として、授業再開をあきらめる声を上げる者はない。大学は自らの責務として、開講の努力を続けるのである。

授業こそ、学生や地域の安全を守る

 いざ授業を開始すると、日本人学生や留学生たちが国内外の感染拡大地域から移動してくるかも知れず、地域には不安が生じるだろう。不幸にして感染者も出るかもしれない。潜伏期が1〜2週間であるため、前週や前々週の教室で二次感染が起きなかったかを調査することにもなる。


筆者

安居光國

安居光國(やすい・みつくに) 室蘭工業大学くらし環境系准教授

1958年生まれ。大阪大学理学部大学院生理学専攻博士課程修了、理学博士。専門は微生物応用,技術者倫理,教育工学。バイオマス利用研究のほか、教育改善方法、研究公正を検討している。日本工学教育協会・技術者倫理調査研究委員会委員として次世代の技術者教育を研究している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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