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HPVワクチンをめぐる膠着状態に、打開の動き

国が積極的な勧奨をとりやめてから約7年、「知らせる」動きが広まる

小島正美 食・健康ジャーナリスト

 子宮頸がんなどを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種率が1%以下に激減してから約7年たった。国が積極的な接種勧奨の再開に二の足を踏む中、危機感を抱いた一部の医師や地方自治体が事態の打開に動き始めた。国は動くのか。

「みなさん、接種は無料で受けられます」

 今年2月2日、東京都内の会議室に医師や大学生ら約10人が集まった。「いまもHPVワクチンが無料で接種できることをみんなに知らせよう」と呼びかける運動をスタートさせるためだ。

拡大HPVワクチンが今も無料で接種できることを知らせる運動を始めようと集まった人たち=2020年2月2日、都内

 プロジェクト名は「HPV Vaccine for me」(私にHPVワクチンを)。できるだけ多くの人にワクチン接種を呼びかけ、一方で接種し損なった女性たちに対する公費助成を訴えていくのが狙いだ。

 無料の定期接種が始まったのは2013年4月。その2カ月後、予防接種の副反応報告を受け、国は「積極的な接種勧奨の差し控え」を決めた。その影響は大きかった。以来、自治体のほとんどは接種対象者(小学6年~高校1年)に対して、はがきなどによる「無料で接種ができますよ」という個別の通知をやめてしまった。

 「自治体の個別通知がなくなったため、無料でワクチン接種が受けられることを知らない中高生や親が増えてきた」と呼びかけ人の一人で感染症対策コンサルタントの堀成美さんはいう。続けて「いま重要なのは、無料で接種できることを知らせることです」と訴える。

誤解された「積極的勧奨の差し控え」

 こうした状況が生まれた裏には、「積極的勧奨の差し控え」の意味が正しく伝わっていなかったことが挙げられる。国が差し控えたのは「接種を勧めること」で、ワクチン接種自体を中止したわけではない。無料で接種できる制度自体は存続している。自治体も個別通知をしなくなっただけで、接種を否定しているわけではない。

 ところが、現実には「ほとんどの人は無料接種のことを知らない」と小児科医の峯眞人さん(さいたま市)は体験を交えて現状を話す。

 さらに自治体が個別通知をしなくなったことで、知っていれば接種したはずの機会を逃す中高生もたくさん出てきている。中高生を相手に性教育の授業などを行っている産婦人科医師の高橋幸子さん(埼玉医科大学医療人育成支援センター助教)はこんなエピソードを明かす。

 「HPVワクチン接種が無料で受けられるのは高校1年までです。あなたたち2年生はもう無料では受けられませんと話すと、『えー、なぜ!』と落胆のため息がもれるんです」。

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筆者

小島正美

小島正美(こじま・まさみ) 食・健康ジャーナリスト

1951年愛知県生まれ。愛知県立大学卒業。2018年まで毎日新聞記者。現在は「食生活ジャーナリストの会」代表。著書に「メディア・バイアスの正体を明かす」など。

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